芸能

ビートたけしの金言集「芸人は面白ければ何をしようが構わない」

 10年以上前、殿の付き人を務めていた時のこと──。

 その日、久しぶりに軍団の兄さんらが神宮外苑のグランドでやられていた、早朝野球に顔を出した殿は、

「ダメだ。体動かねーな。投げ方忘れちまったよ」

 と、何度もこぼしながらも、実に楽しそうに、野球小僧となって白球を追いかけていました。

 昼前、たっぷりと野球を楽しんだ殿は、夕方からの収録のため、一足先にグランドを去ると、付き人のわたくしを連れて青山のうなぎ屋へと少し早いランチをとりに繰り出したのです。

「お前酒飲めるんだろ。じゃービール飲んでいいぞ。俺は日本酒でももらうかな」

 店に入るなりアルコールを勧めてきた殿に、“えっ、これからまだ仕事があるのに酒入れちゃうの?”と、戸惑うわたくしに、

「酔っぱらってフラフラで付き人やられちゃかなわねーけどよ。飲んでもいつもどおりできるんだったら飲んでもいいんだぞ」

 と、大変素敵な自論を展開されると、さらにこう続けたのです。

「昼から酒を飲もうが朝からセックスしようが、人様に迷惑さえかけなけりゃ何をしたっていいの。芸人はお笑いだけ真面目にやってればいいんだから」

 その後、日本酒を升で3杯程入れた殿は、ゆっくりとうな重を食べ、サウナで汗を流すと、いつもどおりのテンションで収録を2本こなされ、夜は夜でしっかりとお酒を飲み、深夜2時過ぎに帰宅されたのです。

 当時すでに50を軽く過ぎていた殿、タフです。

 で、勘違いしないでいただきたいのは、殿が酒を飲んで仕事をした姿がかっこいいとか“フラ”だとか、そういうことを言いたのではありません。ここで伝えたいのは、殿が常々言われている、“芸人はちゃんと面白ければ、何をしようと一向に構わない”といった、揺るがない考え方です。

 以前、ある芸人が変態で、どこの風俗も出禁、といった話題から、皆で散々笑った後、殿は少しばかり落ち着いたトーンになると、

「まー変態だろうが人でなしだろうが何でもいいんだよ。面白ければいいの。お笑いだけ真面目にやってりゃ、普段は何だっていいんだから」

 と、御自分に言い聞かせるように漏らしていました。誤解しないでください。殿は変態ではないですよ。まー殿の性癖はさておき、殿の“芸人は面白ければ、何をしようと一向に構わない”といった考え方です。

 つい先日も、周りが引くほどブラックな話題で盛り上がったあげく、最後には、

「どうして俺たちはこう人でなしなんだ。絶対地獄に落ちるな。だけど死ぬまでこんなこと言ってんだろうな」

 と、バカは、いやいや、“芸人は死ぬまで治らない”的な、ため息まじりの本音を漏らしたものの、

「おい、今のやりとり覚えとけよ。ライブで話すからよ」

 と、いつだって笑いに対し、すこぶる真面目な殿なのでした。

ビートたけしが責任編集長を務める有料ネットマガジン「お笑いKGB」好評配信中!

http://www.owarai-kgb.jp/

◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!

カテゴリー: 芸能   タグ: , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    デキる既婚者は使ってる「Cuddle(カドル)-既婚者専用マッチングアプリ」で異性の相談相手をつくるワザ

    Sponsored

    30〜40代、既婚。会社でも肩書が付き、責任のある仕事を担うようになった。周囲からは「落ち着いた」なんて言われる年頃だが、順調に見える既婚者ほど、仕事のプレッシャーや人間関係のストレスを感じながら、発散の場がないまま毎日を過ごしてはいないだ…

    カテゴリー: 特集|タグ: , |

    これから人気急上昇する旅行先は「カンボジア・シェムリアップ」コスパ抜群の現地事情

    2025年の旅行者の動向を予測した「トラベルトレンドレポート2025」を、世界の航空券やホテルなどを比較検索するスカイスキャナージャパン(東京都港区)が発表した。同社が保有する膨大な検索データと、日本人1000人を含む世界2万人を対象にした…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , |

    コレクター急増で価格高騰「セ・パ12球団プロ野球トミカ」は「つば九郎」が希少だった

    大谷翔平が「40-40」の偉業を達成してから、しばらくが経ちました。メジャーリーグで1シーズン中に40本塁打、40盗塁を達成したのは史上5人目の快挙とのこと、特に野球に詳しくない私のような人間でも、凄いことだというのはわかります。ところで、…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , |

注目キーワード

人気記事

1
大谷翔平「3度目のメジャーMVP」でもかなわない「凱旋帰国」の高すぎるハードルと「出禁」問題
2
大谷翔平「MVP受賞映像」で「真美子夫人の妊娠説」が噴出したワケ
3
なんだこりゃ!岡田将生の電撃結婚を「完全スルー」した「めざましテレビ」の担当は元カノ鈴木唯アナ
4
東京ドームで観客半分の「プレミア12」にサッカーファンが「シラケる」挑発バトル
5
マイルCS大的中の馬券師が断言!ジャパンカップ「勝つのはドウデュース以外の日本馬」「買える外国馬は1頭だけ」