それをやってますとね、ちゃんとした人の詞はやっぱりいいなという結論ですね。詞をいただく場合、プロの作詞家とアマチュアの作詞家とトンでもないアマチュアと3つある。このトンでもないアマチュアというのは箸にも棒にもかからない。それがなかなか‥‥。しかも、それがスポンサーの社長が作った詞なんかやったらやらざるをえない。詞を見て曲を作ってますと、詩人がいかにすばらしいか、ええかげんか、まったくアカンか、ものすごく影響を受けるんです。
せやから作曲するからにはいい詞をもらいたい。それだけです。有名な作詞家はダテに有名ではない。アマチュアはデタラメなんですよ。ただ書いてあるだけで作詞になっていない。詞というのはセンスのものですからハートが匂わないとあきませんやん。それが語呂だけ合わせてあるような詞は非常に困りますね。
長年やってきてそんなんにできるだけ出会わないように念じております(笑)。
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プロの詞だと1時間。アマチュアは3日、トンでもないアマチュアはどうしょうもないですからできない。できないけど、できないでは済まんですから非常に不本意にまとめて提出しますね。この詞を作曲すると早死にしますよ(笑)。
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反対にすばらしい詞と出会えると感動して若返る。いちばんうれしい瞬間っていい詞をもらった時ですわ。読んでええやん。その瞬間が何よりも代えがたい。期待感がありますから受け取った瞬間が何よりも至福です。職人がええ材料をもらった時みたいな感じやね。
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現在は消費社会。その中でもキダ氏は時流に溺れることもなく、戦前から戦後、激動の時代を見てきた。
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生まれた当初はそこそこ食べ物はあった。日中戦争が始まってだんだんと乏しくなって太平洋戦争の前ぐらいから配給制になったんです。その頃からもう一宇飢餓状態。戦争に負けてからは経済が崩壊してさらにひどかったですね。食べ物がない。ナンボお金を積んでも入らない。着物を出したり、物々交換でお米を手に入れてた。戦後から食生活は右肩上がりです。日本国民が全員右肩上がり。今現在ピークなんですよ。コンビニがそこらじゅうにあって、ちょっと歩けばそこそこの味の食事が十二分に食べられる。こんなええ時代はないと思ってます。
キダ・タロー:1930年、宝塚市生まれ。作曲家としてこれまで数多くのテレビ番組やCMソングなどを手がける。代表作に、NHK「古寺巡礼」「生活笑百科」など、作曲した作品は3000を超える。また「探偵!ナイトスクープ」(朝日放送)の最高顧問としてもテレビ出演中。