これは神様が与えた試練なのでしょうか。大観衆が見守る中、主軸のプライドをズタズタに引き裂く指揮官の仕打ち。それでも、チャンスにまるで打てないあなたは、遠い目をしながら耐え抜くのみでした。拝啓、村田修一様─。チームはもう優勝間近です。その瞬間、カヤの外のあなたはそれでも心底喜んでいるのか、不安でなりません。
「今後、村田修一(31)が急に打ち出すとは考えづらいし、現実的に難しいでしょう。緩慢な走塁や守備は多少、矯正できますけど。層の厚い巨人には、いくらでも控え選手はいますしね」
いきなりの手厳しい言葉、お許しください。でも巨人担当記者たちが、口をそろえてそう言うのも事実なのです。理由はご自身もおわかりでしょう。
あれは9月7日のヤクルト戦。信じられない光景を目にしたのは、まだ序盤の2回裏でした。三塁の守備に着こうとするあなたを、原辰徳監督(54)が手招きしたのです。「修!」
不思議そうな表情で駆け寄るあなたに指揮官が発したのは、思いもよらない言葉でした。
「今日はここで交代だ。もう(自宅に)帰っていいから、ゆっくり休んでくれ」
5番を打つ主軸の一人が、わずか2回でお役御免。これには巨人担当記者も驚きを隠せない様子です。
「相当な屈辱でしょう。外国人選手の中には、采配に怒って帰るヤツはいますが、監督のほうから帰れと言うのは今まで聞いたことがない。これは原監督なりのショック療法であり、何とか復調してほしいという親心なんですが‥‥」
ショックを与えなければならないほどの「病巣」。それについては、この日の岡崎郁ヘッドコーチ(51)がこう説明してくれました。
「三振とゲッツー。今日は期待できないということで代えた。本人にとっても屈辱的な交代だと思う。明日、どういう姿でグラウンドに来るか楽しみです」
初回、先頭の長野久義(27)からの4連打で、いきなりの2点先制です。なおも無死一、二塁の絶好機で打席に立ったあなたは、三振に倒れました。さらに2回、1死一、二塁の場面では、三塁へのゴロを放ちます。さほど強い当たりでもなく、三塁手・宮本慎也(41)の体勢も崩れていたにもかかわらず、緩慢な走塁で併殺打にしてしまいましたね。そういえば、9月5日の阪神戦でも1死一塁で新井良太(29)の打球を後逸し、岡崎ヘッドに「責められる守備でしょう。ゲッツーなら終わっていた」と苦言を呈されていました。 原監督は「ずっと出ずっぱりだったし、今日は任せろ、という意味です」と、リフレッシュを強調しましたが、実際は懲罰交代だったというわけですね。
屈辱にまみれてベンチ裏へと引き揚げるあなたが「何だよ!」「クソッ!」と漏らすのを耳にしたという選手がいますが、さらし者にされた悔しさを晴らすのはプレーによってのみだということを、あなたは重々承知していたはずです。