去年、今年と、2年連続で“単独ライブ”を開催された殿。その内容は、殿が落書きを施したパネルの数々をバカでかいスクリーンに映し出し、「殿、いい歳して何をやってるんですか!」と、ツッコんでいく形のスライドショーです。
今回は、そんなスライドショーで発表される、殿の飽くなき“落書きパネル作成風景”について──。
ちなみに落書きの土台となるパネルは、朝の情報番組などで必ず目にする、日々起こる事件等をわかりやすく説明するためのパネルボードのことです。
殿は現在、毎週土曜22時生放送のTBS系「新・情報7デイズニュースキャスター」出演のため局へ入るとすぐさま、大量に放置された使用済みパネルを求め、“とある保管場所”へ赴くと、その中からじっくりと吟味され、“これだ!”と思ったパネルを勝手に拝借し楽屋へ持ち帰ってきては、22時の本番ギリギリまでの時間を毒ガス満載な落書きパネル作成に費やします。当たり前ですが、この行為は殿のまったくの個人的な遊びであり、殿はこの遊びを、まるで義務のように数年前から毎週続けています。
以前、付き人が落書きパネル作りを手伝った際、うまくできずにもたついていると、見かねた殿は、
「何をやってんだ! これが遊びだと思ったら大きな間違いだ!」
と、叱ったことすらありました。この時、その場にいた誰もが、〈殿、思いっきり遊びです〉と、心の中でツッコんだのは言うまでもありません。で、殿のお手製落書きパネルの特徴は、直筆によるブラックな落書き、それと、写真を貼りかえるコラージュにあります。
簡単に説明すると、事件を起こした当事者の顔写真を、殿の特異なセンスによって別の顔写真に貼りかえるのですが、その貼りかえ用の写真は、番組のあるスタッフさんが殿の指示のもと、サイズや顔の向きなどを考慮し、毎週用意してくれるのです。殿はその方に絶大な信頼を寄せていて、
「○○さんあっての俺のパネルだな」
と、常々口にされています。で、つい先日、わたくしが、「殿、もし○○さんが他の番組に異動になったら、このパネル遊びも厳しくなりますね」と、何気なく振ると、殿は“そうか、何かと異動の多いこの業界、そんな事態もあるのか”といった顔つきで、しばし無言で小さくうなずくと、ややあってから、
「あれだな。もしそうなったら、局の偉い人に俺が土下座をして、○○さん残留をお願いするか。それでもダメなら、嘆願書を作って、署名を集めて直訴しよう」
と、熱く語ったのです。
さらには、
「それでもダメな時は、俺は番組を降りる」
とまで、やはり熱く言い切ったのです。
熱くなる殿のお姿は大変素敵です。が、みなさん、何度も書きますが、落書きパネル作りは殿の個人的なまったくの遊びです。何もそこまで熱くなる必要があるのでしょうか。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!