「どうだ、ネットマガジンの準備は順調か?」
数年前に、殿が責任編集長を務めるネットマガジン「ビートたけしのお笑いKGB」の立ち上げが正式決定してから、何度も何度も、冒頭の言葉をどさくさ紛れで「KGB」副編集長となった、わたくしに聞いてきていた殿なのです。
ある日のこと、〈ビートたけし、ネットマガジン参戦!〉といった情報解禁の記事がネットなどに踊ると、
「どうだ? 反応はすごいか? たけしがネットに参戦って少しは騒ぎになってるか?」
と、世間のリアクションをいたく気にしていました。そして、ネットマガジンの話題になると必ず「最初はどのくらいのやつが見るんだよ?」との質問が。要するに、月額540円の「お笑いKGB」加入者の見通しを聞いてくるのです。それに対し、「そうですね。タレントや文化人なんかのメルマガですと、5000人とかで大成功だといいますから、殿でしたら、いきなり6000人くらいは集まるんじゃないですか」と、正直あまり根拠も説得力もない憶測を述べると、
「そんなもんか? 何か少ねーな、ちきしょ! いきなり10万人ぐらい入んねーか!」
と、実に殿らしい豪快でデカイ希望をさらっと言いい放つのです。しかし、10万人って!
で、当初、15年の秋、11月創刊を目指していた「KGB」ですが、諸々の事情により、ズレにズレ、2016年の1月創刊が濃厚となり、さらには、最初の1カ月ぐらいは、お試し期間、宣伝期間として、その一部を無料で閲覧できる状態からスタートします。といった説明を殿に報告すると、
「最初は無料で見せるのか? だけどそれ大丈夫か? 無料の時だけ見られて逃げられねーか? よくいるからな。金取るって言った瞬間に怒り出す奴が。昔あれだよ、北野屋で(殿がその昔オーナーを務めていた居酒屋さんね)軍団に、『いつもお前らタダだけど、今日はさすがに1人500円ずつ貰って飲み放題にするぞ』って言ったら、『殿、話が違うじゃないですか! このぼったくり!』って泣きながら騒ぎ出したことあったからな」
と、ややお門違いな心配をされていました。
とにかく、殿の「KGB」熱は高く、2015年最後の「KGB」打ち合わせを楽屋で済ませると、番組収録まで小1時間あったため、「ちょっと寝るわ」と、毛布をかけ一旦は横になったのですが、まだ話し足りないといった感じでわたくしを呼び寄せると、目をつぶりながらも、
「とにかくくだらないことをいかに毎月やるかだな」
「老後の楽しみはもうネットマガジンだけだな」
「もうちょっとして体が言うこと聞かなくなったらよ、ネットマガジンで好きなことやって、あとは年2回ぐらいの単独ライブやって死ぬだけか‥‥」
と、立て続けに「KGB」にかける熱い思いを、次から次へムニャムニャと炸裂されたのでした。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!