「正義の番人」と呼ばれる弁護士の不祥事があとを絶たない。今度は、東京弁護士会所属の40代弁護士が依頼人の和解金を横領したあげく逃走。詐欺の余罪まで浮上しているのだ。しかもこの人物、名球会スターのタニマチとしてその羽振りのよさも有名だった。金にまみれた悪徳弁護士を告発する。
今年3月1日、東京地方裁判所は、東京弁護士会所属の弁護士に対して約7100万円の支払いを命じる判決を言い渡した。これがスポーツ界を巻き込む騒動となっているのだ。法曹関係者が内情を説明する。
「今回、支払い判決が出たのは、菅谷公彦弁護士(50)。13年に民事トラブルの対応を委任された菅谷氏は、依頼者が受け取るはずだった約6000万円の和解金を横領していたことが発覚した。その事実に気がついた依頼者は、菅谷氏に返金を求め続けたが応じなかったため、昨年秋に都内の法律事務所に相談。担当した代理人の弁護士は、菅谷氏に返金を求める通知書を送りましたが、これを無視された。そのため、菅谷氏の法人名義の銀行口座の仮差し押さえ手続きを行ったところ、この時すでに預かり金口座の残高はわずか1224円しかなかった。そこで、昨年11月末、事態は菅谷氏らに損害賠償を求める訴訟へと進展したのです」
しかも菅谷氏は3回の口頭弁論に一度たりとも姿を現さず、その結果、渡辺諭裁判官は「(原告の)請求を認めたと見なすのが相当」として、賠償命令を下した。ところが‥‥。
「この判決に対して、菅谷氏は控訴を行わなかったため、被告敗訴が確定した。当初、菅谷氏は、原告側に判決内容に応じる姿勢を見せていた。ところが、4月頃から音信不通になり、約4カ月が経過した現在も返金せずに、行方をくらませています」(前出・法曹関係者)
それだけではない。菅谷氏はこの6000万円の他にも横領に手を染めていたとして、同様の判決を受けていたのだ。
司法担当記者が言う。
「菅谷氏は、別の2人の依頼者からも、同様の手口で約5000万円と約1300万円、計約6300万円の横領を行った。いずれも訴訟ざたになり、東京地裁に返金を命じられています」
こうした相次ぐ敗訴で高額の賠償判決を受けての“逃走”とは、何とも情けない話だが、この菅谷氏こそ、関係者の間では「元日本ハムの稲葉篤紀氏(44)のタニマチ」として知られる人物だったのだ。
菅谷氏と親交のあった弁護士が当時の様子を振り返る。
「菅谷氏は以前から日本ハムの大ファンで、チームの中心選手だった稲葉氏を自分が経営する弁護士法人の広告塔として起用していたんです。札幌にあった菅谷氏の事務所のエントランスには、スーツ姿の菅谷氏と稲葉氏ががっちり手を握り合っているツーショットの大きなポスターが貼ってありましたよ。また、菅谷氏は、稲葉氏が主催する『AIプロジェクト』という社会貢献団体の支援も行うなど、稲葉氏と親密な仲であることをしきりに吹聴していました」
菅谷氏の知人もこう証言する。
「試合中、札幌ドームのオーロラビジョンに稲葉氏が出演する弁護士法人のCMが流れるのを見たことがあります。菅谷氏本人が始球式のマウンドに立つこともあったし、当時在籍していたダルビッシュ有と一緒にお立ち台に立ち、MVP賞を手渡したことも。札幌ドームのバックネット裏最上段のVIP席で関係のある女性と観戦している姿も目撃したことがあります。日ハムの沖縄キャンプにも足を運ぶなど、まさに、プロ野球選手のタニマチ気取りでした。そんな金がどこにあるのかなと思っていましたよ」
かつては、社会的ステータスでもあるタニマチだったが、その正体はとんだペテン師だったのだ。