東京五輪で侍ジャパンの指揮を執る稲葉篤紀監督が、アマ球界の視察を開始するなど、3年後を見据えて動きだした。ところが、新監督の船出に水を差すかのように、誰もが望んだ監督人事ではなかったとの声が聞こえてくる。実は、就任要請を受けていた本命が交渉過程で決裂していたというのである。
2020年の東京五輪で悲願の金メダルを狙う侍ジャパンの監督に就任したのは、元日本ハムの稲葉篤紀氏(45)だった。
13年に侍ジャパンの監督に抜擢された小久保裕紀氏(45)が、ベスト4敗退となった今春のWBCを最後に退任。日本野球協議会の侍ジャパン強化委員会が中心となり後任人事を進めてきたが、スポニチが7月11日に「稲葉監督」の急浮上をスクープし、球界に衝撃が走った。
なぜなら次期監督は、巨人監督時代に7度のリーグ優勝、3度の日本一を達成し、第2回WBCの優勝監督でもあった原辰徳氏(59)で、ほとんど固まっていたと見られていたからだ。
舞台裏を明かせば、「稲葉氏擁立」は、用意周到に準備されたものではなく、6月に入ってから急転直下で決まったという、ドタバタの就任劇だったのである。
「実は原氏、前DeNA監督・中畑清氏(63)、稲葉氏の3人が最終候補として残っていました。その中でもWBC優勝経験があり、スター軍団をまとめるカリスマ性もある原氏の再登板が最有力だったんです。監督人事の途中経過報告を受けていた熊崎勝彦コミッショナー(75)も一時期、『次は原』だと思い込んで納得していたほどでした。それが原氏との交渉過程でひっくり返ってしまった。最大の理由は“黒幕”の存在、そして5年前に報じられた『1億円問題』にあったんです」(事情を知る球界関係者)
監督人事を行う過程で、理解しがたい“裏事情”があったようなのだ。
侍ジャパン強化委員会は、王貞治氏(77)や星野仙一氏(70)ら過去の7人の代表監督経験者からヒアリングを行い、「求心力」「短期決戦対応力」「国際対応力」「五輪対応力」という4つの条件を満たす人物を次期監督像に掲げ、慎重に検討していた。結果、「五輪対応力」を除く3つの条件を満たす原氏を推す声が圧倒的となり、「原監督」の方向で進んでいたという。だが、いざ具体的な交渉の段になると、一転して暗礁に乗り上げたのだ。
「交渉内容は、契約年数と年俸、他の仕事との関連などでした。基本的に侍ジャパンの監督は、並行してテレビ局の仕事や講演などの活動もOK。その代わりに年俸を抑えるという方針です。第2回WBCでは、コーチのギャラがあまりに少ないので、原氏がみずからのポケットマネーでコーチの分を補填していたのは有名な話ですが、今回もコーチの報酬を含めた条件面で原氏の考えとズレが生じたといいます。とはいえ、その部分はまだ交渉の余地があったようなのですが、最大のネックは、原氏が信頼する“黒幕”がしゃしゃり出てきたことなんです」(前出・球界関係者)
順を追って説明すると、チームには強化本部が新設されており、本部長にはアマチュア界の重鎮である山中正竹氏(70)が就任していた。ところが原氏は、この強化本部にさらなる人材の投入を要求してきたというのだ。
「副本部長として、巨人監督時代からの腹心である、メディア関係者のX氏を入閣させることを希望したんです。つまり、監督を引き受ける条件として、その人事をゴリ押ししてきた。結果、事務局側、そして原氏が特別顧問を務める巨人までが激怒し、『原の再登板を潰せ』となったようです」(前出・球界関係者)
「原監督を陰で操る黒幕」として、週刊アサヒ芸能もたびたび報じてきたX氏の存在が、決定寸前まで進んでいた東京五輪での「原ジャパン」誕生を幻に終わらせる結果となったようなのだ。