日本の野球組織を分裂させてしまうかもしれない。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会のHPで“衝撃的な文言”が記載されていた。野球・ソフトボール競技についてだ。
〈アメリカに次ぐ野球大国と称される日本において、(中略)アテネと北京では、全てプロ選手で臨むドリームチームを編成しており、東京2020大会も同様だろう〉
野球・ソフト競技が東京五輪の追加種目の当選を目指していた時、プロ、アマチュア組織が一体となってロビー活動を行い、共同してキャンペーン活動も繰り広げてきた。そのため、東京五輪を戦う侍ジャパンはプロアマ混合チームになると目されてきたのに、〈全てプロ選手で〉と記載されているのだ。プロアマ混合チーム説については、
「そういう方向だと聞いた人もいれば、『正式には決まっていない、これから話し合う』と言う要人もいました」(球界関係者)
実際、清宮幸太郎が高校最後の夏に挑む前だった。進学かプロ入りかで揺れていた時期で、当時、「東京五輪に出場したいですか」の質問も受けている。プロ志望の強かった清宮が、進学の可能性を捨てきれなかった理由の一つに東京五輪への夢があるとされ、裏を返せば、こうした経緯からしても、「出場枠を確保できる」と解釈するアマチュア球界の関係者は少なくなかったのだ。
HP上の文言通りになれば、追加競技に当選するために活動してきたアマチュア各組織は“ムダ骨”ということになる。
「野球競技の参加は6カ国です。1勝すればメダル確実、出場国は今秋のプレミア12の成績を加味して決定されますが、日本のアマチュア野球のレベルはむしろ高いほうです。昨夏のアジア大会でアマ選抜チームはオールプロで臨んだ韓国と決勝を争いました」(前出・球界関係者)
現在、稲葉篤紀監督率いる侍ジャパンは3月9日から始まるメキシコ代表チームとの強化試合にオールプロのメンバーで臨む。五輪本番を戦ううえで、若手をテストする最終ステージと位置づけていた。12球団から主力級のメンバーを集めるのか、若手とのバランスをはかるのかもまだ決まっていないという。
抜き打ちに近い形で東京五輪はオールプロの動きが出てきたことにより、アマチュア球界との関係に亀裂が生じなければいいのだが…。
(スポーツライター・飯山満)