ただ、厳しい予選を勝ち抜いてきた代表メンバーから、45歳のカズ招集に対する不安、反発、軋轢はまったく聞かれない。そればかりか、一夜明けただけでキング・カズへの期待はより膨らみ、チームに活気がみなぎっているという。別のサッカー担当記者が話す。
「3回連続のW杯切符を手にした時、昨季のFリーグMVPで得点王の森岡が、『(1月にFリーグ・デビューした)カズさん(の招集)ばかりが注目されるけど、本来なら代表選手をもっとたたえるべき』と話していただけに、今回もカズについての質問に気を遣うつもりでしたが、取り越し苦労でした(笑)。メンバー側から積極的にカズさんとの触れ合いエピソードが飛び出してきました」
例えば、宿舎の食堂でカズのテーブルは満席で、カズ自身が思わず「A代表時代は1人なんてこともあったよ」と隠れエピソードを明かしたほどだ。
前出・デスクが続ける。
「(フットサル界の)不遇の時代から引っ張って来た一人の小暮賢一郎(32)は、『カズさんの経験や人間性は間違いなくプラスになる』と話してますし、守りのスペシャリストの小宮山友祐(32)も、『てっきり、“一緒にフットサル界を盛り上げよう”と言うのかと思ってたら違うんですよ。“フットサル界を変えるのはオレじゃなくてキミたちだよ。オレにできることなら何でもやるよ”と、サラッと言ってくれたんで、熱くなりました』と話していましたね」
ロドリゴ監督も、代表メンバー発表の席で、カズのリーダーシップに熱い期待を寄せていたが、同時にそのシュート能力にも高い評価を下しているという。
前出・協会関係者が明かす。
「フットサルのデビュー戦を見て、ゴールへの強い執着心に引かれてました。いちばん多くのシュートを放っていたように、どこからでも狙う姿勢は健在です」
高校を中退し、ブラジルに渡り、19歳の時に名門サントスの一員として日本デビューを飾ったキング・カズ。当時からインタビュー取材を続けるサッカーライターの渡辺達也氏も、衰えを知らないシュート力が魅力だと話す。
「Jリーグ時代もマークを外す動き、落ち着き払ったシュートは“巧み”そのもの。昨年3月の復興支援チャリティマッチで見せた鮮やかなゴールシーンは印象深い。周りは『持ってるな~』という言葉で片づけてましたが、そうじゃない。メンバーや戦術しだいでは、Fリーグの得点王だって狙えます」
そんな現役にこだわり続けるストライカーの足元を見ると、プーマ一筋のスパイクから(日本代表スポンサーの)アディダスに履き替えていた─。