「さー、盛り上がってまいりました!」
まったく盛り上がっていないのに、わざとそこに触れてちゃかす、殿の小さなボケを、みなさんも何度となく目にしたことがあると思います。また、まったく初めての企画なのに、
「第145回・輝け! 一流芸能人対抗・熱湯早飲み選手権!」
といった感じで、大きく回数のウソをつく殿の姿も、やはり何度も目にしてきたはずです。これらの“何てことないが、それきっと、たけしさんが最初にやりだしたこと”といった“小さな発明”は結構あります。
少し前、楽屋にて殿とこんな会話がありました。
「殿、今みんな普通にやっている、番組宣伝のジャンクションでボケるやり方って、殿が最初にやりだした遊びですよね」
「そうか? あれは毎回ふざけてたら、最初の頃は『ちゃんとやってください』なんてディレクターに撮り直しさせられてたんだけどよ、言うこと聞かないで何度もふざけてたら、『もうそれでいいです』ってなったのが最初じゃねーか?」
ちなみに「宣伝のジャンクション」とは、番組と番組の間に流す、番組出演者が揃ってカメラ目線で番組のタイトルを言う、5秒ぐらいのあれです。このジャンクションで殿は、
「この後は、『ビートたけしのバカがタンクでやってくる!』」
とボケていました。宣伝ですから、番組名をわざと間違えるなんてことは、本当は御法度です。が、何度もふざけていくうち、“たけしさんならしょうがね~か”となり、今では殿以外のタレントさんも時折やっているのをお見かけします。
他にも、新人のアイドルさんなんかが、番組の中で、ややとんちんかんな発言をされた際、直接ツッコまず、殿の隣に座っている、気心の知れた、そのアイドルとは何の関係もないタレントの頭を、無言のままピコピコハンマーで叩き、“あいつを何とかしろ!”といった、間接的なツッコミを入れるやり方も、殿がやりだした形です。
さて、先ほどの楽屋に話を戻しましょう。
「ホームレスの方を『レゲエのおじさん』と言い換えたり、ずばり『コーマン』と言い換えたやり方も、殿がやった発明です」
と、殿にあてると、
「じゃー、そういうのまとめてよ、本にするか!」
と“ビートたけしがやってきた、発明あれこれ辞典”出版化計画をノリノリで炸裂させたのでした。
そして、「コーマン」という言葉にインスパイアされてしまったのか‥‥。この時、ある番組の観覧でスタジオに招待された、全員20代前半と思われる、一般女性の方々が、30名程ぞろぞろと殿の楽屋前を通ると、その団体を目にした殿は、
「すごいな。あれみんなコーマン付いてんだもんな?よく集めてきたな。大したもんだ」
と、“いったい何を言ってるんですか!”と、ツッコまざるをえない、かなり下衆なお言葉を、しっかりと漏らしていました。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!