今大会2日目に登場する岩手県代表の盛岡大付はある不名誉なワースト記録を保持しているチームだ。それは甲子園春夏を通じて初出場からの“連敗記録”である。
同校が初めて甲子園に出場したのは夏の選手権の95年第77回大会。この時は初戦で名門・高知商と対戦し、善戦したものの5‐7で惜敗した。その翌年の第78回大会にも2年連続出場を果たしたが、東筑(福岡)の前に0‐2で完封負けを喫してしまった。以後、01年第83回夏の選手権では近江に1‐4、03年には春夏連続出場するが春の選抜では強豪・横浜(神奈川)に0‐10で大敗、夏の選手権では延長戦の末福井商に6‐8、その翌年の第86回夏の選手権では明徳義塾に2‐15と完敗。そこから4年ぶりの夏となった08年第90回大会では駒大岩見沢(北北海道=現在は閉校)に3‐8で敗れ、これで通算7連敗。この数字は甲子園初登場からの連敗記録としては59年夏~67年夏の海星(長崎)と71年春~00年夏の岩国(山口)と並ぶ最多連敗タイ記録となってしまった。
盛岡大付の連敗はさらに続き、初出場した03年から7年ぶりの春となった10年の第82回選抜では中京大中京(愛知)に4‐5と1点差に泣き8連敗。これでワーストを更新してしまった。その2年後の12年夏の選手権第94回大会では延長12回の死闘の末、立正大淞南(島根)の前に4‐5で敗れ、これで二ケタ連敗にリーチがかかる状態に。
確かに95年の初出場から18年間で9度の甲子園出場は実力の証でもあるのだが、ツキに見放されるなどしてとにかく甲子園1勝が本当に遠かったのである。
だが、そんな盛岡大付が待望の甲子園1勝をあげる瞬間がやってきた。13年第85回春の選抜である。安田学園(東京)との一戦は互いに4回に2点を取り合い同点のまま終盤戦へ。すると8回裏に盛岡大付はホームランで1点を勝ち越し、あとはこの1点を守り切るだけだった。ところが9回表に2アウトから長打で追いつかれ、暗雲が垂れ込めかけた。それでもその裏に1アウト一、三塁のチャンスを作ると、ここで次打者にショート内野安打が飛び出し、4‐3で劇的なサヨナラ勝ち。甲子園通算10試合目でようやくつかんだ待望の“甲子園初勝利”だった。
二ケタ連敗を免れた盛岡大付はこのあと、14年第96回選手権で東海大相模(神奈川)相手に4‐3と接戦を制し、夏の甲子園の初白星も飾っている。今回は昨年夏に続く連覇を狙う作新学院(栃木)と初戦で激突。連敗街道から脱出したチームが昨年王者の連覇阻止に立ち上がる。
(高校野球評論家・上杉純也)