ここ数年、イチローの日本球界復帰説は幾度も報じられたが、いずれも噂の域を出なかった。しかし、こうした背景もあって、ついに古巣・オリックスが本腰を入れて動き出していたのである。
「そもそも、宮内義彦オーナーはイチローとの関係が切れないように腐心してきた。毎年、イチローは帰国後のオフに球団施設で自主トレをしますが、規則上ではオフの期間に選手は球団施設を使えません。宮内オーナーが特別な手続きを施して、厚遇したんです。全ては、オリックスに戻ってきてもらうためです」(球団関係者)
昨オフにはマリナーズ時代のチームメイトでもあった長谷川滋利氏(49)をシニアアドバイザーに就任させている。そして今年、球団内では「最後の切り札を切った」と称される人事異動がひそかに敢行されていた。
「元オリックスの捕手で、昨年までスカウト部の国内編成担当だったA氏という職員がいます。主に2軍の選手を見て、居場所のない選手を見つけるやトレードを仕掛けてきた。1軍選手にも目を光らせていて、元・日本ハムの小谷野栄一(36)がFAした際に獲得を進言したこともあります。そのA氏が今年から、スカウト部の海外担当になったんです」(前出・球団関係者)
この人事にはストーリーがあった。昨年に起きた、さる出来事が鍵となる。オリックスは15年から、球場で観戦以外にも楽しめる「ボールパーク構想」を強化する方針を打ち出してきた。
「現在、準本拠地にしている『ほっともっとフィールド神戸』には屋根がないため、本拠地を『京セラドーム大阪』に一本化する計画があるんです。そこで昨年、球団社長をはじめフロント幹部が本場アメリカのボールパークを視察に訪れています」(前出・球団関係者)
一行にはA氏も含まれていた。そして、マーリンズの本拠地であるマーリンズ・パークを訪問した際、運命的なシーンが訪れる。視察をしている一行に、イチローが「Aさーん!」と声を上げながら駆け寄ってきたというのだ。
「さすがの球団社長たちも『お前、何であんなにイチローと親しいんだ?』と驚きました。実はイチローの入団直後から寮の同部屋で過ごし、イチローの教育係的な立場にもあったのがA氏なんです」(前出・球団関係者)
プロの心構えを説いたと言われるA氏。先のように、世話になった関係者に挨拶回りを欠かさないイチローが慕っているのも当然だろう。
「視察の時点で、イチロー獲得に具体的な展望はありませんでした。そればかりか、ここ数年、形ばかりの交渉で手応えを感じられなかったこともあり、今年からA氏をイチロー獲得への交渉役に抜擢し、本格交渉に乗り出すことにしたわけです」(前出・球団関係者)
気になるのは交渉の進展だが、在阪の球界関係者は、球団フロントが「来年、イチローが帰ってきます」と断言していると明かすのだ。