熱戦が続く甲子園。全国から勝ち上がった強豪校が覇を競うこの大会だが、兄弟校や同じ大学付属の系列校の対決ともなれば、ユニフォームが似ていて、見ているほうにとっては攻守の見分けが付きにくいということになるのではないか。
実は同じ大学の系列校対決は春夏通じて何回か実現しており、夏の甲子園では’83年第65回大会の初戦で東海大第一(現・東海大静岡翔洋)対東海第二(現・東海大熊本星翔)の東海大学の付属校対決などが実現している。この時は同年の春の選抜でベスト4の実績があった東海大第一が13‐1と圧勝してその貫禄を示したが、実は見る側からしてもあまり混乱することはなかった。というのも、同じピンストライプのユニフォームながら、地の色が微妙に違っていたため、見分けることがさほど難しくなかったのだ。
全国各地に大学の付属校が散らばっているため、こうした大学の付属校対決は、甲子園ではレアケースながらも実現の可能性があるが、次に紹介する対決はレアケースの中でもかなりのレアケース。
それが実現したのは02年第84回大会3回戦でのこと。奈良県の智弁学園と智弁和歌山の兄弟校対決が決まったのだ。地方大会では95年秋の近畿大会で対決が実現しているが(この時は智弁和歌山が5‐0で勝利)、甲子園では今のところこの1回のみ。
兄弟校なため、ユニフォームのデザイン・色調も同一で、違いは左腕の校章の一部と互いの県名、そして胸に描かれてある“智辯”という字の大きさで判断しないといけないというかなりのわかりづらさだった。とはいえ、この“同一ユニフォーム”対決は大きな混乱をきたすことなく弟分の智弁和歌山が7‐3で勝利している。かつて“もし対戦が決まったら、普段は白い帽子をかぶっているが、どちらかが白ではなくスクールカラーである朱色の帽子をかぶる”という噂があったが、噂は噂のまま終わり、両校とも白い帽子のままであった。
(高校野球評論家・上杉純也)