大会3日目の第1試合は石川県代表の日本航空石川が千葉県代表の木更津総合に5‐6で勝利し、2回戦進出を決めた一戦だった。7回を終わって1‐5とリードされていたが、8回表に1点を返し、土壇場の9回表には6本のヒットを集中させて6‐5と鮮やかな逆転劇。その裏に2アウトから連打されて一打同点⇒逆転サヨナラ負けというピンチを迎えたものの、最後のバッターを三振にしとめ、負け試合から一転、勝利をもぎ取ったのだ。日本航空石川ナインも延長戦を覚悟したであろうことは想像にかたくないが、09年第91回大会以来の2度目の出場でみごとに夏の甲子園2勝目をマークしたのだった。
石川県といえば、星稜や金沢、そして最近では遊学館が甲子園常連校というイメージが強いが、この3校はすべて私立。そんな私学3強が甲子園出場を競い合うようになった近年の石川県にあって、2度の夏の甲子園出場を果たした公立校がある。小松高校である。そしてこの小松高校、“夏の甲子園に2回出場して2回とも延長戦で敗戦”という何とも悔しい思いをしている高校なのだ。
初出場した86年第68回大会では初戦で四国の強豪・高知商と対戦し、戦前は高知商の一方的な試合展開が予想されたものの、本番では終盤まで0‐0と緊迫した展開に持ち込む大健闘ぶり。それでも8回表に2点の先制を許したものの、その裏にすかさず追いついて延長戦に持ち込むという互角の試合を演じた。結果的には11回表に2点を勝ち越され、その裏に1点を返すも3‐4で惜敗し、待望の甲子園初勝利は次回へと持ち越しになったのだった。
それから13年後の99年第81回大会に2度目の出場を果たした小松は初戦で隣県の新湊(富山)と初戦で激突。この時は8回を終わって5‐0とリードし、甲子園初勝利が目の前にまで近づいていたが、なんと9回の表に守備の乱れから一挙5点を失い延長戦へ。そしてまたしても延長11回表に4点を勝ち越され、5‐9で無念の敗戦を喫したのである。
この“出場した2回とも延長戦で敗戦”の悲運は、今なお熱烈な高校野球ファンに語り継がれている。
(高校野球評論家・上杉純也)