穏やかに対応したいと考えていたというA社長が続けて明かす。
「事件から1週間ほどしても、まさとから謝罪も何もない。腹が立っていたら『社長さんですか? ちょっと、まさとのことで‥‥』と人相の怪しい40代ぐらいの2人組が事務所を訪ねてきたんですわ。名前も名乗らんと、事件のことを口にする。『あんたら(まさとに)頼まれたのか?』そう言っても言葉を濁すだけでした。私も筋モンとのつきあいは昔あったので、これが威嚇であることぐらい、すぐにわかったわけです。きっと金になると思って来たんでしょう。『まさとがケガしたんやから‥‥』と言われたので、『ケガしたのはワシのほうや』と言い返し、自分が被害者であることを説明すると、相手は『話が違うやないか』とブツブツ言いながら帰っていきました」
ヤクザを差し向けての恐喝行為──。A社長がそう感じたのも当然だ。
このあと、まさとは親しい知人に「ヤクザにお金を払うので金を貸してほしい」と20万円を借りているという。A社長が続ける。
「筋モンの一件以降も、まさとからは謝罪もない。それで7月3日、月曜日の午後に吉本本部に電話をかけたんです。『このような事件がありますけれど、そちらのコンプライアンスはどないなっているんですか?』と、総務の担当者に相談をしました。丁寧に話を聞いてくれて『すぐに調べてみますので』と返事をもらったんです。すると夕方6時頃に『まさとを(会社に)呼んで事情を聴きました。大変なことをしてしまいまして、申し訳ありません。今からまさとを連れて謝りに行きたいんですが』と連絡が来ました。『私も忙しいので‥‥』と渋っていたら、7時過ぎに総務の方と吉本のグループ企業の総務関係の子会社の社長さんの2人がいらっしゃいました」
近所の喫茶店に場所を移して話し合いが行われることになったが、2人はこう謝罪をしてくれたという。
「事情は(まさとから)聞きました。Aさんのおっしゃるとおりでした。会社としては何かトラブルがあったら、すぐに報告をしろと指導をしているんです。それなのに何の報告もありませんでした。ヤクザを行かせたのはアカンことです。あいつにはキツく言っておきました。最終的には会社が決めることになりますが、私としてはクビにしたいと思っております。本当にご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
誠意ある対応に、A社長の溜飲も少しは下がったかもしれない。ところが、思いがけず事態は最悪の方向に向かってしまった。まさとが〈もうお終いだ〉とメールを打って亡くなったのは、吉本から事情を聴取された翌日のことだった。
「亡くなった翌日に私の知り合いの芸人から(まさとが)亡くなったと聞いて驚愕しました。私が吉本にした電話が関係しているのは明らかじゃないですか。私としては、目覚めが悪いのは当たり前のことです。『社長はあくまでも被害者であるし、常識的な対応をしているんだから責められることはありませんよ』と芸人たちは慰めてくれるんですが、それでも心の傷になっています」(A社長)