通夜、葬儀は市内の葬祭場で行われたが、吉本が会社として告知をしなかったので、事実を知らなかった芸人も多かった。参列した芸人が言う。
「本当に寂しい葬儀でした。師匠の西川きよしさんは舞台で忙しいということで列席しませんでしたし、一度も顔を見せなかったんです。きよし師匠はテレビでは人情味があるとされていますが、一部の芸人からは薄情だと評されていたので、ボク自身は驚きもなく、あきれただけでした。祭壇にはコーラのペットボトル1本と、師匠の娘でタレントの西川かの子が持ってきたという、スーパーで売っているカットスイカが乗っているだけで、しかも298円という値札もついていた。吉本興業の大崎洋社長名義の花だけが飾られていましたが、芸人の末路を見るような思いがして切なかったです」
市内に住むまさとの母親を訪ねた。80歳近くの母親は小さなマンションに1人で暮らしている。
──自殺なさった息子さんのことですが‥‥。
「急なことでショックでした。何で亡くなったのか、まったくわからなくて、今でも頭の整理がつかないんです。‥‥悲しくて」
シワだらけの両手で顔を覆ってしまった。
──原因はご存じないですか?
「(まさとは)一人息子で、私に心配をかけまいと‥‥。私には昔から苦労話はしませんでした。何があったのか本当にわからないのです。どうか吉本の本社のほうに問い合わせていただけませんか」
──師匠のきよしさんは葬儀にはいらしたのですか?
「いいえ。きよしさんは舞台が忙しいということで、通夜の前に娘のかの子さんが来てくださいました。『まさとさんがスイカを好きだったから』とスイカを持ってきてくれたんです」
吉本興業に、西川まさとが自殺した事実や経緯、公表しなかった理由などを問い合わせると、広報部がこう回答した。
「亡くなったのは事実です。ただし、ご遺族の意向で、お問い合わせがあれば死亡した事実に関してはお答えしますが、それ以外の質問に関しては事務所からの回答は差し控えさせていただきます」
また、師匠の思いを聞こうと、西川きよしの自宅を訪ねたが、「事務所を通してください」とのこと。そこで、あらためて吉本に問い合わせると、きよしは「霊安室にお参りしており、ご挨拶もさせていただきました」(広報部)という返事。その後、正式に、
「長年、慰問などでいろんな施設にご一緒させていただきましたが、残念でなりません」
と、亡き愛弟子についてコメントを寄せた。
些細なイザコザが傷害事件に発展し、そこにヤクザが介入、そして会社から叱責を受けた末に自死。事件の種をまいたとはいえ、何とも後味の悪い結末となってしまったのである。