テレビドラマにとって最も恐れるべき存在は“クレーム”。視聴者から大物芸能人まで、抗議に屈したお蔵入りシーンとは?
社会現象にもなった、朝の連続テレビ小説「あまちゃん」(13年・NHK)に異変が生じた。8月15日放送のダイジェスト版「朝まで“あま”テレビ」で第38話のセリフの一部がカットされていたのだ。「あまちゃん」ファンの作家・亀和田武氏が解説する。
「小泉今日子(51)演じる母親・春子が急に昔のアイドルについて語りだし、能年玲奈(24)演じる天野アキが目をぱちくりさせる場面です」
5月14日の本放送での春子のセリフは次のとおり。
「みーんな夢中だったのよ、聖子ちゃんには。何しろ歌がうまい! もちろんかわいい! ブリっ子って言葉の語源は聖子ちゃんだからね。かわい子ぶっているのに同性に嫌われない。むしろ憧れの対象だったわけ」
何が問題だったのか。
「実は、『ブリっ子の語源は聖子』という部分を、過去のイメージを掘り起こされたくない松田聖子(55)が問題視し、抗議したというのです」(放送関係者)
完全版DVDボックスでも、該当部分はバッサリとカット。代わりに「青い珊瑚礁」で出場した紅白の歌唱シーンが加えられた。
「DVDから削除されてしまったのは残念ですが、のちに事務所トラブルで芸能界から消されそうだった能年さんが“のん”に改名し、再びCMで復活されている姿を見るとホッとします」(前出・亀和田氏)
一方、その恐ろしさを見せつけたのが細木数子(79)。平均18.3%の高視聴率を叩き出した天海祐希(50)主演「トップキャスター」(06年・フジテレビ系)の第3話にかみついたのだ。
「黒田福美(61)演じるインチキ占い師の、『地獄に落ちる』という口癖や、運勢が悪いと改名を勧めるという描写が“自分を想起させる”と、細木が激怒したのです」(スポーツ紙記者)
これにより、放送2週間後にはお蔵入りが確定。スポーツ紙記者が続ける。
「以降、再放送やDVD、アメリカのケーブルテレビでも、3話はなかったことになっています」
視聴者からのクレームが巻き起こした珍事といえば、最近では大河ドラマ「真田丸」(NHK・16年)での一件が──。
「7月31日の放送回で、赤ちゃんの着物がめくれ、時代背景にそぐわない紙オムツが映ってしまったのです」(テレビウオッチャー)
ツイッターでは「わざと」「ミス」の論争が巻き起こり、再放送ではそのシーンをカット。
一方、笑い事で済まされなかったのが、芦田愛菜(13)主演、児童養護施設を舞台にした「明日、ママがいない」(14年・日本テレビ系)だ。
1月15日に第1話が放送されると、翌日、熊本市の慈恵病院が、「養護施設の子供や職員への誤解や偏見を与え、人権侵害だ」と放送中止を要請したのだ。
「これを皮切りに、同病院はBPO(放送倫理・番組向上機構)へ申し立てをし、全国児童養護施設協議会も抗議。日テレは放送継続を病院側に伝えましたが、第3話までにスポンサー全社がCMを自粛するという異例の事態に。2月上旬、日テレは病院と協議会に謝罪と内容変更を示しました」(制作会社スタッフ)
その後、発売予定だったDVDボックスも発売中止に。クレームによる自主規制が激化するテレビ局、フィクションであるドラマさえ作れなくなる日も近い!?