広島カープがリーグ優勝を決め、連覇を達成した。まさに、カープ旋風ここに極まれりという様相だが、心配事がないではない。
リーグ1位の広島が出場する「クライマックスシリーズ ファイナルステージ」は、カープの本拠地「マツダスタジアム」で行われるのだが、一躍、強豪チームとなり有頂天になった広島ファンの「本拠地での観戦マナー」が問題視されている。スポーツライターがこう言う。
「昨年あたりから言われていることですが、マツダスタジアムのビジター応援席に空席が目立つんですよ」
ビジター応援席とは、外野応援席の一角で、対戦するビジターチームのファンがユニフォームを着て応援するための席。その中で広島ファンがユニフォームを着用しているのはマナー違反ということになる。スポーツライターが続ける。
「通常の応援席を買えなかったファンや、そもそも相手チームのファンを締め出そうとする勢力が、ビジター応援席のチケットを買い占めているようなんです。その証拠に、席に座らずに通路で立って応援している広島ファンがすごく多い。一野球ファンとして、すごく寂しい現象ですよね」
2005年、ボビー・バレンタイン監督のもと、日本一までを駆け抜けたのは千葉ロッテマリーンズだが、その勝利の美酒に酔いしれた「日本一のファン」は、数年後に選手を中傷する横断幕を試合中に掲げるまでに増長し、問題となった。えてして弱小チームが急に強豪の仲間入りをすると、ファンの気持ちが“インフレ”を起こすものなのかも知れない。
「伏線になっているのは、2015年に日本球界復帰した黒田博樹投手だと思っています。MLBヤンキースから20億円を超えるオファーを受けていながら、『帰ってくる』という約束を果たすために5億を提示した広島に復帰したんですが、この一連の経緯をもって、黒田投手には『男気』という冠が掲げられ、何もかもが無条件に正しいという世論になった気がしてならないんです」(前出・スポーツライター)
最近の言葉で言えば「大正義」。実際、黒田入団の効果と言わんばかりに勢いづき、2016年に25年ぶりとなる優勝を果たした。
「象徴的だったのは、2015年4月の広島対阪神戦。阪神先発の藤浪が、送りバントの構えをする打者・黒田に対し、2球インコースを続けた際、黒田が激怒してマウンドの藤浪に詰め寄っていくというシーンがありました。この一件が、今シーズン精彩を欠く藤浪のトラウマとさえ言われていますが、当時21歳、3年目の若い投手に、メジャーも経験した大ベテランがキレたわけです。しかしこれすら、『未来を担う若者への熱い檄』と美談に仕立て上げられ、あるいは『ノーコンの若造が球界の至宝に怪我をさせるところだった』などと言われたりもしたんです。疑いもなく黒田は、広島は常に正しいとする雰囲気に違和感を覚えました」(前出・スポーツライター)
今シーズン、「神ってる」どころではない圧倒的な強さを見せた広島カープ。ゆめゆめ、その栄光をファンが貶めるようなことがあってはならない。