「殿、フランス最高勲章、レジノン・ドヌール・オフィシエ! おめでとうございます」
「そんなことより、11月のKGBライブ(殿が責任編集長の有料ネット・マガジンのイベントね)でよ、×××をやりてーんだよな」
「勲章もらったのに、そんな○○なことやっていいんですか?」
「バカ野郎! こっち(ライブ)だって遊びじゃないんだ!!」
先日、「北野武にフランスより最高勲章!」といったニュースが駆け抜けた3日後、殿にお会いした時の会話です。ナポレオンが創設した、伝統も名誉もたっぷりな勲章を受章されてからの殿は、当たり前ですが大変テンションが高く、この日も終始、
「これで勲章をはく奪されたら、笑うな」
「来週、(授与式参加のため)フランスに行ってくんだけどよ、帰ってきたらナポレオンのかっこで現れるか!」
と、もうノリノリで、得意の毒ガスをまぶしながらも、日本人として32年ぶりの快挙に、いたく興奮し、喜ばれていました。
かつて、「コピー・ザ・漫才」といったテレビの企画で、昭和のいる・こいるさんの漫才をコピーして、「よくがんばったで賞」といった賞の受賞経験しかないわたくしが申すのもなんですが、1999年に授与された勲章「シュバリエ」、2010年の「コマンドール」、そしてこのたびの「オフィシエ」と、折に触れてフランスより芸術文化勲章を授与される殿の姿を目にすると、つくづく、〈なんと誇らしい師匠でしょうか! 殿は日本の宝だ!〉と、一人勝手に感化されてはついついこちらまで舞い上がってしまいます。まー、わたくしの田舎者丸出しの勝手な感化はさておき、“3度目”の勲章を受章され、テンションの高い先日の殿です。
以前、こちらでも少し書きましたが、殿はいいことがあると、周りに対し、猛烈に優しくなります。例えば97年、映画「HANA-BI」がベネチア映画祭にてグランプリの金獅子賞を獲得した際、当時、付き人で常に立っているのが仕事だったわたくしに、
「お前、立ってないでそこ座れよ。お茶飲むか?」
と、楽屋で座らせては、お茶まで入れてくれたことがありました。03年、やはり同映画祭にて、銀獅子賞を獲得された「座頭市」公開初日の舞台挨拶直前、舞台袖で殿にお茶を出すと、
「おう、サンキュー。いつもありがとな」
と、お茶を出すのが仕事であり務めの付き人に、はっきりと感謝を述べてこられたこともありました。そんな殿ですから、このたびの“吉報”後も、続々と優しい発言を連発されていました。その中でも一番印象的だったやつをどうぞ。
「お前、今度の金曜空いてる? 家の近くにうまい飯屋見つけたからよ。また食いに行くんだけど、お前も来いよ。そこ、結構イケるんだよ」
一瞬、殿の友達にでもなったのかと、わたくし、思わず錯覚してしまいました。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!