統一球の恩恵を受けるようになったのに、出れば打たれる摩訶不思議。周囲の期待を裏切るように失点を重ねた投手陣の名前を見ていこう。
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今シーズンの投手陣の話題といえば、もちろんノーヒットノーランの多さである。4月には広島の前田健太が、横浜相手に達成。翌月には巨人の杉内。そして10月にはオリックスの西がソフトバンク相手に無安打無得点試合を成し遂げた。
そんな投高打低のシーズンでも、チームの期待を裏切り続けた投手は多い。
まずは、1回の攻撃で相手チームに4点以上を与えてしまった、「ビッグイニングメーカー」の表彰だ。
特に今年のビッグイニングメーカーは大混戦。低迷に悩んだ阪神からは岩田、スタンリッジがノミネート。だが、何といってもその目玉は広島のバリントンだ。先発最多敗戦投手となる14敗を記録している。
「バリントンは1イニングで点を取られて、そのまま負けてしまう選手。味方に足を引っ張られるということもあって、なかなか思うように抑えられなかったんでしょうね」(広澤氏)
昨シーズンは30試合に登板し、13勝をあげる活躍を見せた。結果、推定年俸も昨年度から8175万円増の1億3375万と大幅アップを果たしたやさきのランクインである。広島からすれば手痛い増額と言ってもいいだろう。
ビッグイニングメーカーの混戦ぶりを受けて、江本氏はこう分析する。
「負けの数が多いチームほどビッグイニングメーカーが多い。今の野球は点を取るのが難しくなっているので、ガタガタと崩れる投手がいると逆転するのは難しいんです」
来年のキャンプでは、失点してもふんばる精神力をしっかりと鍛えてほしいものだ。
一方で、先発投手がリードしたまま後続の投手につなげば試合は優勢ムード。ところが、先発の勝ち星をあっさりと消してしまうセットアッパーも目立った。本誌は、そんな背信投手を「中折れ王」と称し、ランキングしてみた。
3位にルーキーの益田、2位には推定年棒4億5000万円と球界トップの岩瀬が登場。そして7回という記録で1位を獲得したのは増井である。
今シーズンの増井について伊原氏はこう語る。
「増井は70試合以上投げたけど、見るたびにやられていた印象がありますね。シーズン最後に抑えた試合で無理をして使ってきた栗山監督が泣く場面もあったが、本当によく打たれていました。もっとも70試合以上投げれば球威がない日もある。これは登板数に応じた記録ですよ。岩瀬、益田に関しても同様のことだと思います」
最後の最後に、チームの勝ち試合を託されるのがストッパー。ところが、今季も同点、または逆転を許す「炎上ストッパー」たちが試合をぶち壊した。
3位には、辛くも守護神の座は守り続けた武田久と、シーズン途中から守護神の座を剥奪されたサファテが仲よく入った。そして1位は、14年連続50試合登板を果たした鉄人・岩瀬。中折れ王2位に続いての不名誉記録達成である。
「岩瀬は年のせいもあるんですけど、これだけストッパーがみんな打たれているのは、先発が長い回を投げないからでしょう。結果として、ストッパーに負担がかかってしまっているんです」(江本氏)
とはいえ、勝利の方程式すら作れないリリーフ陣に伊原氏はこう嘆く。「これほど炎上ストッパーの多い年はない。今年は真のストッパーがいない年だった。出してほとんど間違いないのは西武の涌井ぐらいでしたからね」(伊原氏)
最終回で同点や逆転される場面はファンにとってみれば悪夢そのもの。悪夢の連続はチームの士気にも影響しただろう。
それだけに広澤氏は、日本ハムの優勝に驚きを隠せない。
「中折れ王・増井がいて、炎上ストッパー3位の武田久が後ろに控える。普通は、ここがしっかりしてるから優勝できるんだと思いますよね」
投手陣の弱い部分をカバーし、チームの総合力で優勝をもぎ取った、新任・栗山監督の偉業はもっとたたえられるべきか。