尼崎連続変死・角田美代子被告
“隣人クレーマー”への対抗策を専門家が伝授する!
複雑怪奇な様相を呈している尼崎連続変死事件。主犯格の角田美代子被告(64)はクレーマーとして有名な存在だった。はたして“迷惑な隣人”があなたの身近にいたら、いったいどう対処すればいいのか。
連日、次々と新事実が明らかになる尼崎の連続変死事件は、あまりにも多岐にわたるその全容を把握するのは至難の業。しかし、その手口には共通点が多い。
「現在までで、角田被告の周辺人物7名の遺体が確認されているが、被害者はいずれも角田被告が、親族や近隣の家庭の些細な弱みを握り、それをネタにクレームをつけ、最終的に金銭的に骨の髄までしゃぶり尽くし、用済みになると、周りの人物に始末させるという、いずれも残忍極まりない手口です」(捜査関係者)
だが、こうしたケースは氷山の一角にすぎない。殺人事件にまで発展しないものの、隣人クレーマーによる“ご近所トラブル”は社会問題になるほど深刻な事態になりつつある。では、こうした隣人に対抗するにはどうしたらいいのか。
「何が原因でトラブルに発展するかわからないから、自衛策が必要」と指摘するのは、近隣トラブルに詳しい弁護士のS氏だ。「トラブルの原因は、騒音や土地の境界、日照問題、ゴミ捨てマナー、景観、悪臭、ペットのマナーなど枚挙にいとまがありません。まず肝心なのは、クレーマーとのトラブルが発生したら、そのトラブルに関する証拠を細大漏らさず残しておくことが大切です。そうすれば、法律的なトラブルになった時にも早急な対応が可能です」
クレーマーとのトラブルに関して言えば、弁護士は法的な根拠がないと動けない。そのために、日頃から冷静に証拠集めをすることで、後々有利に働くという。S氏が続ける。
「賃貸トラブルの場合は、管理会社などに防犯カメラの取り付け要求をすることができますし、引っ越しせざるをえなくなった場合は、その費用を請求することもできます。ですが、弁護士がトラブルのもととなる行為をストップさせるのはなかなか難しい」
一方、元警察官で日本安全保障・危機管理学会の顧問でもある北芝健氏はトラブル根絶の方法を伝授する。
「まず一つは、絶対に当事者同士が顔を合わせないこと。話し合うにも感情が先走り、トラブルが加速します。さらに勢いで手を出してしまうと、たとえ手を出したほうの言い分が正しくても、物理的な損害を与えたほうが分が悪い‥‥」
確かに今年10月、警視庁の元警視がご近所トラブルの末、向かいに住む女性を刺殺後、自殺を図ったのも、たびたび顔を合わせケンカがエスカレートした結果だった。
さらに北芝氏によれば、
「代理人を立て、相手に言い分を伝える」のが賢明だという。まずは「一軒家同士のトラブル」の場合──。「以前、近所の『A宅が取り付けた芳香剤が風でB宅へ流れた』ことが発端となった事例がありました。B宅は臭害とアレルギーによる体調不良を弁護士を立ててA宅に書面で伝えました。すると、今度はA宅も同様に主張を文書で送ってきた。それを受けたB宅は病院でもらった診断書を添えて書状を送ると、ついにA宅は芳香剤を外しました。B宅は体調不良が回復したので主張を聞いてくれたA宅にお礼を言いに行き、最終的には一緒に旅行するくらい仲よくなったんです」
軍事評論家で危機管理コーディネーターでもあるテレンス・リー氏が具体的な対策をあげる。
「近隣トラブルが起きやすいのは、主に新興住宅地です。さらに、ふだんは仲よくしていた家庭同士が驚くほど些細なキッカケで揉めることが多い。最初は注意から、そして無視が始まり、エスカレートしてくると、相手の屋敷内にゴミを捨て、さらに報復が報復を呼び‥‥。これは非常に危険です。新興住宅地は間に入って仲裁してくれる人がいませんからね」
こうしたケースでは、実は意外なほどシンプルな解決策がある。
「自治会に入ればいいんです。地域のつながりがないからどこに相談していいのかわからない人が多いので、日頃から自治会ないし、なにがしかの地域コミュニティにコミットメントしておけば、何か起こった時の準備にはなります」
最近では、東日本大震災以降、防災強化により近隣住民の話し合いが増え、初めて自治会ができたケースも多いという。
また、賃貸マンションの場合は、
「管理費を払っている以上、管理人にトラブルシューターの役割を担ってもらうしかない」と北芝氏は解説する。
そして、“トラブル根絶”において最も効果的なのが、「警察に通報する」ことだという。
「所轄の警察署に行くより、110番のほうが断然有効。『警察署への相談』だと報告義務もなく対応もいいかげん。110番は報告義務が生じて記録に残り、親切丁寧に対応してくれます。また、日頃から地域の警察と仲よくなっておくことをお勧めします。それが制服警察なら効果的。制服を見ると、嫌がらせ騒音などはたいてい収まります。警察は全国でいちばん強い“代紋”ですからね」(前出・北芝氏)
たかがご近所づきあい、されどご近所づきあい。快適に暮らすには、やはり日頃の“つきあい”が大切なのだ。