長打、連打の出にくい昨今、盗塁の成否は試合の流れを左右する。技術はもちろん、心理戦すら要求されるこの部門で、無駄死にし、走られまくった選手たちを振り返ってみたい。
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まず、せっかくの攻撃チャンスをみずからの足で台なしにしてしまった選手たちを見ていくと、なんと名前があがるのはどれも盗塁王争いにしのぎを削った俊足ぞろいである。
17回というすさまじい数字で1位を獲得したのは、32個でセの盗塁王にも輝いた大島だ。次塁を狙った数は49。つまり、盗塁する約3回に1度は失敗している計算だ。足が速いといっても、この数字はあまり歓迎できるものではない。
「ランクインされている全員が足の速い選手。当然、相手のバッテリーからも警戒されている中なので、この数字はしかたない部分がある。やはり盗塁王を取るためには、それだけ刺されなければいけないということなのでしょう。でも大島の32回で17失敗というのは効率が悪いですね。来シーズンはもう少し成功数を伸ばすように心がけたほうがいいと思います」(広澤氏)
続く2位は今シーズン打撃不調の続いた岡田。プロ初の失策を記録するなど、定評のあった守備面でも不安要素が残る1年は走塁面にも暗い影を落としたか。
一方、5位の聖澤にも注目したい。失敗数は11回だったものの、成功数は今シーズン球界トップの54である。この数字に野田氏も舌を巻く。
「聖澤の数字はすばらしい。大島、岡田は成功数も多いがそのわりには失敗数も多い。聖澤は成功数が50を超えながらも、失敗は11回。よくこの失敗数で抑えたとほめてあげたい」
あっぱれの聖澤に、活を入れられる大島。リーグトップの両選手でも、その評価は真っ二つである。
そんなランナーたちの盗塁の成否を決めるのは、捕手たちの存在である。
今シーズンも、チームの要となるはずが、いとも簡単に走られ放題だったキャッチャーは別表のとおり。
特に今年は、捕手たちのふがいなさが目立った。
5位の山崎でさえ、すでに阻止率が2割台後半というありさまだ。4位には、昨年、巨人から古巣・横浜にFA移籍しながら、100試合以上出場して打率が1割8分9厘と低迷したうえ、阻止率も2割台中盤と精彩を欠いた鶴岡が入った。ゲームメーカーであるはずの捕手たちの醜態に、江本氏はこう活を入れる。
「阻止率はピッチャーも悪いとよく言われるけど、やはりキャッチャーの責任が大きい。ピッチャーに『ボールを長く持て』といった指示を出せるのはキャッチャー。もちろんランナーが走るのを想定して外すのもキャッチャーです。結局、そのあたりの勘が鈍い選手がワーストになっている」
そして不本意な数字で3位の細川は、最低打率、最少打点でもパ・リーグトップになっている。
「今シーズンはつらかったんでしょうね。もともと、インサイドワークにたけていて、能力のある選手ですから、なおさらですよ」(広澤氏)
驚くのはまだ早い。1位は、信じられない数字を叩き出した楽天の嶋。単純計算でも、10回に8回は盗塁を許していることになる。
「阻止率が1割台は考えらない数字です。本来は、2割ぐらいがワースト1位にならなければいけないですよね」(広澤氏)
5月に受けた親指付け根のケガで、一度は登録抹消されたものの、2カ月後には復帰。嶋にとってみれば、受難の年とも言える1年であった。アマチュアレベルと言われないよう、来年こそは正捕手の底力を見せてほしい。