秋競馬も佳境。京都競馬場で行われるマイルCSが今週のメイン。テンからやり合う激しいレースが毎度展開されることで、見応えある一戦になること請け合いだ。
まずは顔ぶれを見てみよう。先の天皇賞・秋でも有力視されたサトノアラジン、ネオリアリズムが登録してきた。尋常ならざる道悪で期待を大きく裏切ったことで、捲土重来を期してのことなのだろう。
が、巻き返しはそう簡単なことではない。能力は高いが、マイルのスペシャリストが多い中、力量どおりの走りは難しいと見るべきだろう。
ただ、「この馬でやむをえない」という突出した存在はいない。イスラボニータ、エアスピネル、レッドファルクス、レーヌミノルといったところが有力候補ということになるが、絶対視できるほどではない。簡単に人気どおり収まりそうにない雰囲気が漂う。
それではデータをひもといてみようか。
02年に馬単が導入されて以降、これまでの15年間、その馬単で万馬券が飛び出たのは4回(馬連は3回)。1番人気馬は4勝(2着3回)、2番人気馬はわずか1勝(2着3回)。特に大きく荒れるということは少ないが、それでも順当に収まることは少なく、小、中波乱の中穴傾向のGIと捉えるべきなのだろう。
サラブレッドが最も充実して力を出せるのは4歳秋とは昔から言われることだが、やはりデータもそう教えている。過去15年間を振り返ってみても4歳馬が5勝(2着7回)、5歳馬が6勝(2着6回)と圧倒的だ。
であれば、やはり4、5歳馬に目をつけるのが筋ということになるか。
ただ今回は、前述したように図抜けた存在が見当たらない。あらためてメンバーを見渡すと、逃げる馬は、はっきりしている。マルターズアポジーだ。
今年新設されたGI大阪杯の結果は12着と悪かったが、調子も決してよくはなかった。それでも果敢に挑戦したのは、厩舎関係者がこの馬の能力を高く評価していることの証しだろう。
今回は春と比べものにならないほど状態がいい。大阪杯は2000メートルだったが、この馬のベストはマイル戦。同型の逃げ馬はダノンメジャーしか見当たらないが、そのダノンメジャーはテンのスピードで劣るだけに、無謀な競り合いは避けるに違いない。
「ここはひそかに狙っていたレース。楽しみにしている」
とは堀井調教師の弁だが、ならば、マルターズアポジーの逃げ切りも大いにあっていいわけだ。
が、逃げるのは他陣営も周知のことで、そうであればマークはことのほか厳しい。そこで大きく期待できるのがウインガニオンだ。
恐らく番手か、3番手の競馬だろう。前走の関屋記念では、マルターズアポジーにまんまと逃げ切られたが、そのあとはここ一本に備え、短期放牧でリフレッシュ。しっかりと乗り込まれて臨戦態勢は万全だ。
気のいいタイプで鉄砲駆けが利く馬だが、右回りに実績がなく、評価、人気は低いはず。であれば穴党としては好都合だ。
「以前と違って体に柔らかみが出て、器用さが加わった。脚質を思えば、今なら右回りのほうが力を発揮できるはず」
とは西園調教師の弁。この馬も充実著しい5歳馬。ステイゴールド産駒で道悪になった場合でも対応力は十分。マイル戦を最も得意としており、大きく狙ってみたい。