昨年11月21日に逝去した「落語界の風雲児」立川談志。そのイズムはファンを魅了し、多くの有能な弟子を輩出した。今なお語り継がれる数々の伝説を「立川流四天王」の一人である立川談笑と、親交の深かった山中秀樹が爆笑放談。談志の息吹がよみがえる!
山中 談志師匠がお亡くなりになられて1年ですか。
談笑 晩年は、トークショーの司会などで山中さんにはだいぶんお世話になりましたね。
山中 師匠とは15年くらいおつきあいをさせていただいて、談笑さんの真打ち披露でも僕が司会をさせてもらった。
談笑 その大事な真打ち披露に師匠が「行かない」って言いだした。
山中 そうそう。来ないのならしょうがないということで、等身大のパネルを用意した。でも、ちゃんと来られたんですよね。
談笑 来たんですけど、せっかくだからってパネルを飾ってたら、本人が来ているのに、どういうわけだか一般のお客さんがそのパネルとツーショット写真を撮り始めて。本人よりも大人気でしたよ(笑)。
山中 ハハハ。今日、メモを持って来たんだけど、09年8月21日、談笑さんの独演会に師匠がゲストで出演されたじゃないですか。
談笑 確か、虎ノ門のJTホールでしたかね。
山中 そう。その時に師匠、足が悪くて高座が終わって立ち上がれなくて。それで談笑さんがオンブして高座から降ろした。
談笑 1人で降りられないこともなかったんですけど、危険だったので。
山中 あの時は声もあまり出てなかったし。で、心配になって楽屋に駆けつけたら師匠が車椅子に座っている。もうビックリですよ。
談笑 たまたまスタッフの人が骨折して車椅子で来ていて、師匠が「一度乗ってみたい」って腰を下ろしたところだったんですよね。「意外に快適だな」なんて言いながら(笑)。
山中 そうそう。いよいよ歩けなくなっちゃったのかなって、本気で心配してたら、ひょこっと立ち上がってね(笑)。
談笑 ところで山中さんは、師匠の訃報はどこで?
山中 これが不思議なご縁だなあと思うのは、その日は一門以外で師匠がいちばんかわいがられていた桂三木男君の独演会を観に行っていたんです。で、訃報のニュースが入ってきて‥‥。談笑さんは?
談笑 実はニュースになる前から聞いてはいたんですけど、静岡での独演会の中入りに柳家喬太郎さんから電話があって「このたびはご愁傷さまです」と。「どこで知ったんですか?」って聞き返したら「もうNHKにもみんな出てるよ」って。なので、第一報については、よその一門の方に教えてもらったんです(笑)。
山中 そうだったんだ。
談笑 で、そのあとは独演会の後半じゃないですか。さあどうしようって感じで、一時期師匠に「やっちゃいけない」と言われていた「シャブ浜」という「芝浜」の改作を師匠に捧げるつもりでやりました。
山中 それ、師匠に「古典の名作を覚醒剤まみれにさせやがって」って怒られた噺だよね。
談笑 そうそう。あとで許してもらえてはいたんですけどね。「シャブでも何でもやれ!」って。
山中 師匠らしいですね。
談笑 で、独演会後に東京に戻って師匠が通っていたバーに行ったんです。
山中 「美弥」ですね。僕もその日に志の輔さんから声をかけていただいたんですけど、僕は弟子じゃないから、遠慮したんです。
談笑 あっ、そうだったんですね。その夜は、自分だけが知っている師匠のエピソードトークの大会になって、そりゃあもう大爆笑ですよ。新聞記者さんが店の外でコメントをもらおうと張ってたので「聞こえるからもっと静かに笑おう」なんて言いながら、延々、笑い続けてました。