山中 でもさ、師匠はホントに落語が好きな方で、研究熱心だったよね。僕はご自宅に伺ったことはないけど、一度、落語に埋もれた書斎を見てみたかった。有名な話だけど「泥棒さん、大事な資料だから持って行かないでね。お金はあげるから」って、書斎に3万円を置いていたんですよね。
談笑 そうそう、一度本当に泥棒に入られましたからね。その時に盗まれたのが香水2~3本。それなのに何を盗まれたか聞いてきた警官に対して、「まずは伝家の宝刀ひと振り。それから、なべおさみにもらった1000万円の腕時計」って。そしたらおかみさんが「あんた、それは根津のうちにあるわよ」「黙ってろ、黙ってろ」って(笑)。
山中 ハハハハ。でも、ホントに貴重な資料が盗まれなくてよかったですよ。
談笑 1カ所、鍵のかかる戸棚があって、犯人がバールみたいなものでこじあけたらしいんです。警官が中に入っている物の指紋を取って行ったんですけど、それが全部エロ本だった。
山中 資料じゃなくてエロ本のほうに鍵をかけてたと。よっぽど大事だったわけだ(笑)。
談笑 そうでしょう(笑)。
山中 師匠は縫いぐるみも大事にされていましたよね。特にライオンのライ坊。新聞に「お棺に縫いぐるみを入れた」って。
談笑 僕もテレビで「あれはライ坊だと思います」とコメントしたんですけど、後日、娘さんから「入れたのはライ坊じゃない」って言われました。
山中 えっ、そうなの。
談笑 ライ坊を棺に入れるかどうか、一晩家族で議論したらしいんですが、結局、ライ坊がかわいそうだからということで‥‥。
山中 じゃあ、別の縫いぐるみを?
談笑 ええ。代わりに入れたのがクマで、余裕があるから他にも入れようってことになって「これも好きだったよね」「これも入れましょうよ」「これも」「これもいらない」って、いつの間にか処分箱になっちゃった(笑)。
山中 ハハハハ。今回はこうして談志師匠の話をさせてもらいましたが、落語ファンとしては、今、談笑さんをはじめ若手の落語家さんもいっぱい出てこられていますので、今後の活躍に期待しています。
談笑 師匠が亡くなったことによって、我々一門がバラバラになってしまうのはみっともないですからね。ただ、そのみっともないからという一点で集まっているにすぎないと言っても間違いじゃない。立川流っていう枠組みはあるけど、それは何も品質を保証するものではなくて、それぞれ師匠が弟子を育てていかなくちゃいけませんね。