年明け早々の1月3日。名古屋市で民進党と希望の党による統一会派に向けての協議が行われた。
民進は先の総選挙で3つに分かれた。民進、希望、そして立憲民主党だ。その民進が野党勢力として一つにまとまるべきだと音頭をとって、みずからがプラットフォームになる統一会派結成を呼びかけてきた。これを立憲の枝野幸男代表が拒否。そのため、まず民進と希望で先行して進めようというものだった。が、結論は出ず、継続して議論する形で持ち越しとなった。
「双方に保守系とリベラル系がいて、一口に統一会派と言っても、あいつがいるなら組めない、こっちならいい、など歩み寄りはきわめて難しい」(民進党幹部)
実は協議が行われた名古屋は希望側の窓口である古川元久幹事長の地元。松の内に、わざわざ民進の増子輝彦幹事長が足を運んでまで統一会派を急ごうとしているのは、民進側に来夏の参院選に向けた当事者たちがいるためだ。候補者の一人はこう本音を明かした。
「政党支持率を見れば、立憲から出馬するのが望ましい。統一会派がうまくいかないなら、私は立憲へ移ります。大塚耕平代表は立憲が統一会派を拒否したにもかかわらず、諦めず呼びかけ続けていますが、来年改選組の多くが立憲へ移籍する行動をとると、民進はみっともない壊れ方をする。執行部はそれを避けたいだけ‥‥」
希望にも事情がある。細野豪志氏や長島昭久氏など初期の立ち上げメンバーとそのあとに民進から合流してきたメンバーとの間に深い溝が依然として残っているのだ。あとから合流した比例復活当選議員が言う。
「初期メンバーたちと話したが、旧民進の首相経験者や幹部経験者とは一緒にやれないとか、立憲に対する批判は相変わらずです。そういう態度からは野党再編への本気度は感じられません。政党間の連携でも日本維新の会、中には自民党のほうを向いている人もいるのが実情です。希望が割れるのは時間の問題で、合流組から立憲に20人は行くのではないでしょうか。逆に細野氏らが我慢できずに出ていくという見方すら党内にはあるぐらいです」
立憲の枝野代表が統一会派を拒否しているのは、両党のこうした実情を見抜いているからだ。立憲幹部が話す。
「我々も野党はできるかぎり一つになったほうがいいと思っているが、希望には我々とはやれないと出ていった細野氏や長島氏らもいれば、やむなく合流していったリベラルもいる。民進にも保守とリベラルが入り交じった状態。これらが無条件に一緒になれば、以前の民主党や旧民進党の二の舞になる。ここは、まず立憲がブレずに理念を貫くのが肝要。自分たちを中心に再編していく方針だ。立憲が旗を立てて強気で進んでも、十分に人は集まると思っている」
ここまでくれば、野党再編の道筋も見えてくる。希望と民進はそれぞれ再分裂、そして立憲を中心にしたリベラル系野党と保守色の強い野党に再編されるのが濃厚になってきている。
「ただ、立憲の支持率は3党の統一会派がゴタゴタして調査のたびに1~2ポイントずつ下がってきている。来年は参院選前の4月に統一地方選がある。準備を考えると、少なくとも1年前、つまり今春が再編の形をはっきりさせるリミットだ」(民進党地方組織幹部)
昨年は、安倍一強による政治の緩みが露呈した。そんな状況を作る要因となったのが野党の弱体化。早急に野党再編の形を明示することが、当事者たちには求められているのだ。
ジャーナリスト・鈴木哲夫(すずき・てつお):58年、福岡県生まれ。テレビ西日本報道部、フジテレビ政治部、日本BS放送報道局長などを経てフリーに。新著「戦争を知っている最後の政治家中曽根康弘の言葉」(ブックマン社)が絶賛発売中。