「『銀河3号』に使われている部品は、秋葉原などで買える電気部品をハンダ付けしたもので、手作り感いっぱいのホームメイド(笑)。でも、それが長距離ロケットとして実際に飛ぶわけです。西側諸国の技術者たちは北朝鮮の技術力は低いとか、みすぼらしいと吐き捨てますが、それは西側から見たスタンダード。見てくれなんて彼らには必要ない。北朝鮮が求めるのはデザインうんぬん、信頼性うんぬんではなく、1回でいいから飛ぶロケット。そして、そういうロケット開発を相次いで成功させているということです」
市販の部品をハンダ付けしたみすぼらしいミサイルが宙を舞う。乱暴で滑稽な話だが、紛争地域では高価な兵器など必要ない。「ホームメイド」だが、とりあえず飛ぶ、安価な兵器に需要が高まるのは必然なのだ。
「ロシアの軍事企業が扱うのは、先端的で高価な武器。正直、こんな割の合わないビジネスは手がけません。だから需要は尽きない。これは北朝鮮にしかできない隙間産業というわけです」
加えて国連安保理による制裁逃れを画策する国々にとって、いつどこから調達したのかを判断することが難しい旧兵器は都合がいい。つまり、両者の利害がピタリと一致しているため、関係を断ち切ることはきわめて難しいのだ。
「ウガンダは昨年10月、北朝鮮の軍や企業関係者を送還。スーダンも同年11月、北朝鮮と全ての軍事・経済関係を断つと宣言しました。ただ、需要がある国はそう簡単に北朝鮮と手は切れない。ナミビアは一昨年、世界中で弾道ミサイルや通常兵器の密輸を展開する北朝鮮企業『朝鮮鉱業開発貿易会社(KOMID)』との契約解消を宣言したものの、名前を変えたフロント企業がプロジェクトを継続していました。国連が何度圧力をかけても、ナミビアはなかなか北朝鮮と手を切ろうとしなかった。最大の理由は、軍の元トップである統合本部議長が北朝鮮とベッタリの関係で、その妻が外務大臣だったため、切っても切れない仲でした。北朝鮮が支援する国や組織の中には、特殊部隊や軍隊で大量虐殺を繰り返してきた連中も少なくない。彼らはそんな人間たちと個人的な関係も深い。ヒューマンネットワークを遮断することが、実は一番の問題になるんです」
さて、ここまでは世界に広がる北朝鮮の核・ミサイル販売・修理ネットワークを紹介してきた。そんな北朝鮮にとって重要な物資調達ルートになっているのがなんと、台湾だという。
「台湾は中国が掲げる『一つの中国』という原則の下、国連への加盟が認められていません。そのため、国連が台湾当局と接触することは難しい。北朝鮮にとっては、そのアンタッチャブルな存在が逆に好都合なため、台湾を制裁網の抜け穴として利用してきた経緯があるんです」