さらに水面下では、理事選直前まで、相撲協会の八角理事長体制に対する擁護派とアンチ派による暗闘が繰り広げられてきた。貴ノ岩暴行事件で地に落ちたイメージを払拭するために躍起になってきた相撲協会だったが、それをあざ笑うかのようにスキャンダルが次々と発覚。相撲協会の執行部も相次ぐマスコミリークに“内通者”の存在を指摘。さながら情報戦の様相を呈していたのだ。
「年明けには立行司のセクハラに始まり、初場所中には大砂嵐(25)の無免許運転までが発覚。さらには所属力士による暴行事件を春日野親方(55)が隠蔽していたことまで報じられた。行司のセクハラ騒動は明らかに内部からリークされたもので、次期理事長を狙っている春日野広報部長も不機嫌な様子だった。そして追い打ちをかけるように暴行隠蔽がすっぱ抜かれた。実はその直前の貴乃花一門会の会合で貴乃花親方が『いい情報が入ってきた』とほくそ笑んでいたといいます」(相撲担当記者)
叩けばホコリまみれの相撲界ではその後もスキャンダルの応酬合戦が続いている。執行部側の不祥事が続いたかと思えば、お次は貴乃花親方の右腕と言われる立浪親方(49)の銀座ホステス愛人との密会が写真週刊誌にスクープされたばかり。
「イケメンの立浪親方は“角界の暴れん坊将軍”と呼ばれ、女グセが悪いことで知られている。いまさら女性問題など、驚くようなスキャンダルとは言えないが、写真誌に直撃を受けた際、立浪親方が『こんなことをして誰が得するんだ』と一喝したのが象徴的でした。まさしく今回の醜聞リーク合戦のターゲットになってしまった証左と言えるでしょう」(相撲部屋関係者)
実は、貴乃花親方の笑顔の裏には“秘策”があったという。かつて、2010年に角界浄化を掲げ、二所ノ関一門を割って、理事選に強行出馬。いわゆる『貴の乱』を起こしたが、その際に一門以外の“隠れ貴派”の親方衆の支持を集め、まさかの逆転で理事に当選した経験をもとに、周到な票獲り工作を仕掛けていたというのだが‥‥。
「10年の『貴の乱』では、一門を超えて貴乃花に票を投じたのが立浪一門だった音羽山親方(44)=元幕内・光法=でした。その後、一門を破門となり、貴乃花のもとで部屋付き親方をしていたが、今度は、同じ一門である阿武松部屋に所属する小野川親方(元幕内・大道)が、所有者側から親方株の返還を求められたため、貴乃花親方は阿武松部屋に貸しを作るために、自分の傘下にいた音羽山親方の年寄株を大道に譲り、廃業を言い渡したのです。貴乃花親方は、音羽山親方に一時は『生涯をかけて守る』と言ったにもかかわらず、貴乃花一門での影響力を誇示するために、『貴の乱』の功労者すらバッサリ切り捨てたのです」(前出・相撲部屋関係者)
さらにはこんな話も。
「八角理事長の部屋付きの陣幕親方は貴乃花親方の長男・優一氏の嫁の父。貴乃花部屋のパーティーにも顔を出していた。また、暴行事件での加害者であった伊勢ケ浜親方(57)にまですり寄っていたようです。なんでも、日馬富士を民事で訴えない代わりに票をくれ、という交換条件を出していたとささやかれている」(相撲協会関係者)
とはいえ、貴乃花親方による多数派工作は結局、「貴の乱」で貴乃花親方に票を投じた親方へ再度の協力を呼びかけたものの、今回の第2幕ではかつての同志も皆ソッポを向く形となった。
「親方衆の中で最多優勝回数を誇る貴乃花は、一門を超えてシンパを広げてきたが、今回の一連の行動は相撲協会の膿を出すというより、ガンコなトラブルメーカーの一面が際立つ結果となった。前回理事長選で出羽海一門から一票を投じた山響親方(47)の出馬で、かつて貴乃花親方を支持していたグループの協力を取り付けることは絶望視されていました」(角界関係者)
こうして非情なまでに票集めに徹した「貴の乱」第2幕はむなしく終わったのだ──。