今シーズンまで、女子フィギュアスケートシーンにおいて向かうところ敵なしだったロシアのエフゲニア・メドベージェワ選手。だが、五輪前のロシア選手権は足の甲の骨折で欠場し、直前の欧州選手権では新鋭にして同じエテリ・トゥトベリーゼコーチの門下生であるアリーナ・ザギトワ選手に敗退。平昌五輪では再びザギトワ選手に敗れることとなり、「絶対女王」の名をほしいままにしていたメドベージェワ選手にとって、何とも残念な結果になってしまったと言えよう。
「表情をあまり顔に出さないトゥトベリーゼコーチですが、メドベージェワ選手がSPでザギトワ選手の点に届かなかった時には狼狽するような、驚いたような表情を見せていました。そして、フリー後のキス&クライでのトゥトベリーゼコーチの表情は、メドベージェワ選手が勝つだろうと予期していたように見受けられました。長くメドベージェワ選手を指導してきた立場としても、やはり年上のメドベージェワ選手に勝たせたかったのかもしれません」(スポーツライター)
トゥトベリーゼコーチはロシアのメディアの取材に対して、2人の五輪までの道のりついて「2人はサムライの道を行った」と評している。その上で、「2シーズン勝ち続けてきたメドベージェワがケガと病気のためにガラリと局面が変わってしまった」と語ったのだ。
「もともと黒澤明監督の映画『七人の侍』が広く世界に知れ渡り、“みずからの行動や責任に命をかける”武士道の精神とともに、サムライも広まりました。トゥトベリーゼコーチは、2人がそれほどまでに命をかけて戦ったと称賛したかったのでしょう」(週刊誌記者)
サムライ・メドベージェワ選手がフリーをノーミスで終えた途端に流した涙は、骨折を乗り越え、まさに命をかけた演技が大喝采を浴びたことへの歓喜、そしてその辛く苦しい戦いが終わったことへの安堵だったのかもしれない。
(芝公子)