女子フィギュアスケート界において、アリーナ・ザギトワ選手の登場までは無敵の女王として君臨し続けてきたエフゲニア・メドベージェワ選手。しかし、2018GPシリーズでは、3位、4位と、思うような成績をあげられず、初めてGPファイナルの出場権を逃した。
そんなメドベージェワ選手の状態を、ロシアのレジェンド・スケーターであるアレクセイ・ヤグディンは、メドベージェワ選手が勝てないのはメンタルのせいだとコメントしている。
「ヤグディンは、メドベージェワ選手の滑りに技術的な問題はなく、あるとすれば心理的なものだと指摘しています。メドベージェワ選手自身が、カナダに拠点を移しても変わらず、よりよく滑れるところを見せなければと思うあまり、練習での滑りのようにできなくなっているというのです。さらに、GPシリーズの初戦で3位だったために、GPファイナルへ出るために優勝しなければというプレッシャーも重かったのでしょう。メドベージェワ選手がシニアデビューしてから、ほとんどの試合で優勝しかしてこなかったために、下位から追いかけるという経験がないことも、新たなプレッシャーになったかもしれません」(スポーツライター)
メドベージェワ選手はシニアデビューしてから2位が1回、そして団体戦で2位だった以外、五輪年までの2年は12戦で優勝している。五輪年も、ロシア選手権と平昌五輪でザギトワ選手に敗れて2位になった以外は、出場したすべての試合で優勝しているのだ。とはいえ、今のメドベージェワ選手のジャンプや滑りは以前より精彩を欠いているように見える。
「ブライアン・オーサーコーチのもとで練習するようになり、まだ戸惑いがあるのかもしれません。そもそもカナダのスケーティングとロシアのスケーティングは、重心の位置が違うのだそうです。さらに練習の仕方も大きく違います。ロシアの場合、個々の意思はあまり尊重されず、選曲から振り付けまで指示通りに練習していくやり方で、ある意味、手取り足取りの指導法です。メドベージェワ選手は、カナダの最初の練習で、コーチたちがリンク外から指示を出すのを聞いて、思わず悲しくなって涙してしまったそうです。しかし、新しいやり方に苦戦しながらも、試合で上位に食い込むのはすごいことだと言えるでしょう」(前出・スポーツライター)
浅田真央も選手時代、2010‐2011シーズンにジャンプを基礎からやり直し、佐藤信夫コーチの指導を仰ぐようになり、上位に復調するまで1年以上かかっている。その年、浅田は、全日本選手権、四大陸選手権でこそ2位を取っているものの、GPシリーズは、5位、8位と低迷していた。
名伯楽・オーサーコーチの指導で、また女王に返り咲く日が楽しみだ。
(芝公子)