古今東西、「英雄」と呼ばれる人たちは、スピーチ、ちょっとしたあいさつ等々、“ここでいいことを言ってほしい”といった空気の場で、必ず、印象的で素敵な言葉を言い放ちます。
わたくしの英雄・殿も、“そういった場”で、今までに何度も“やっぱりたけしさんはいいこと言うな~”と、周囲を納得させ、ばっちりと決めてきました。
で、“そういった空気”が一番出る場は、結婚式ではないかと。
誰もが知っている圧倒的有名人の殿は、誰の結婚式に出席しても、ほぼ必ずと言っていいほど、“予定にはなかったのですが”と、あいさつをお願いされることが多々あります。ですから殿は、結婚式を「苦手」と言い切ったうえで、
「俺が行けば、必ず『一言ください』ってなるだろ。それがわかってるから、式の間中、ずーっとネタ考えたりしてヘトヘトになるんだよ。だって、笑いも取らないで普通にあいさつしたら、『素のたけしの話はつまらなかった』なんて思われるじゃねーか」
と、苦悩を語っていたことがありました。
ただ、そこは殿です。そういった場で、“ばっちりと決めた瞬間”をわたくしは何度も目撃しています。
で、結婚式ではないのですが、つい最近、殿が“決めた瞬間”がありました。
1月15日に開催された「ビートたけし“ほぼ”単独ライブ 第五弾in中野サンプラザ」のライブ後の打ち上げの席で、最後の最後、日付が変わる直前に殿がした“本日の〆のあいさつ”が、とにかくグッとくるものでした。
ちなみに、打ち上げ会場には、殿のライブを手伝った、オフィス北野の若手芸人、そして、わたくしの友人の芸人が多数出席していました。
では、少し長いですが、ノーカットでどうぞ。
「あっ、どうも。たけしです。皆さん、お疲れさまでした。え~、今回のライブも、前回もそうですが、みんなには面白い面白いと言われるけれど、本当に面白いものというのは、前回より速いスピードで走りきった感覚がある時にやっと言えるもので、そのスピードを超えられなかった時はダメだと思ってしまう癖がやっぱりあって、今回はもしかしたらそうなれたのかなと‥‥。芸人はそれを考えてないと、落ちていくだけになるので。
あと、今日、手伝ってくれた皆様、本当にありがとうございました。う~ん、でも、俺の手伝いをするために皆様はやっているわけではないので、皆さんも、ぜひ、頑張ってください。数年後、『あいつ、昔、俺のライブを手伝ってたんだぜ!』って、俺に言わせてください(笑)。私も、皆さんに負けないよう頑張りますんで。え~、今日はありがとうございました」
殿が話し終えた瞬間、打ち上げ会場は、“たけしさんを好きでよかった!”といった濃い空気が立ち込め、その場にいた、全ての方の殿を見る目が、はっきりとハートマークになっていました。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!