政治

鈴木哲夫の政界インサイド「『安倍不支持』が強まる裏の野党間“不協和音”」

 森友学園への国有地売却に関する決裁文書改竄問題で、私は野党の喚問への対応に、いささか疑義を抱いていた。佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問が行われたその日、質問に立った希望の党・今井雅人衆議院議員とテレビ中継で話す機会を得た時のこと。

 喚問の質問時間を野党の議席数で割りふったため、小さな党は5分程度しかない。そんな短時間で、いったい何が聞けるというのか。なぜ、野党全部がまとまって、質問内容を調整しないのか。そのことを問うと、今井氏はこう答えた。

「反省しています。突っ込めそうなところで時間がない。各党に事情があります。しかし、その辺りのくふうをしなければ。次の証人喚問はこの教訓を生かしたい」

 もちろん、際立った質問をした野党議員もいた。例えば、共産党の小池晃参議院議員や民進党の江田憲司衆議院議員。だが、いかんせん時間が短い。

 実は、森友問題が再燃した3月2日、ある野党OBが野党各党の幹部らにこんな提言をして回った。

「野党6党(立憲・希望・民進・共産・自由・社民)の仕切りを取っ払って特別チームを発足させ、代表や副代表を置き、調査部会をいくつか置いて組織化すべき。いずれ証人喚問など国会で追及する時が来る。その際に、質問時間を有効に使える。いわば、一つの大きな野党を作るくらいの気持ちで、コトに当たるべき。そのあと、政界再編にもつながるラストチャンスだ」

 もちろん野党6党は合同集会を開き、財務省へのヒアリングなどを続けており、一枚岩のように見えるが‥‥。

「各党のメンバーは、『俺が』『俺が』で質問の統一性がない。他の党が質問して初めて知った事実もあった」(希望の党幹部)

 実情は不協和音が響いていた。国会対策の場面でも同様だった。

「数もあって、勢いもある立憲民主党が主導権を握ろうとして打ち合わせが混乱した。本来なら、最も影響力がある党が後ろに回って下支えしてくれれば、6党がまとまるのに‥‥。かつての自社さ政権の時は、自民党が陰に回って社会党の首相を担いだからうまくいったわけで、立憲は少し考えてほしいところだ」(民進党議員)

 この状況を打開すべく、4月に入ると民進党の大塚耕平代表が新党結成の方針を決めた。地方組織の了承も取りつけたという。大塚代表は、立憲の枝野幸男代表や希望の玉木雄一郎代表に合流を呼びかけていくとしている。が、単独で政党支持率の高い立憲の枝野代表は「合従連衡するつもりはない」と慎重姿勢。6党解散後の新党結成ではなく、立憲に来る者を受け入れる形で新たな野党体制を作る腹づもりのようだ。

「民進党にも希望の党にも、より保守的な野党にしたい連中と立憲に行きたい連中がいる。民進、希望、立憲の三つの野党が最終的には二つになる可能性が高い。だが、大塚代表がこのタイミングで新党結成を言いだしたのは、森友という大きな節目で野党がまとまっていなければ何もできないし、究極的には今しか野党再編のチャンスはないと考えたのだろう」(前出・野党OB)

 マスコミ各社の世論調査を見ると、安倍政権の支持率は、不支持が上回っている。だが、野党各党の支持率は伸びていない。

「このままでは安倍おろしが始まり、次の総裁は誰かという自民党内政局を前に野党の存在は埋没してしまう」(野党幹部の一人)

 森友問題で正念場を迎えたのは安倍政権だけでなく、野党も同じなのだ。

ジャーナリスト・鈴木哲夫(すずき・てつお):58年、福岡県生まれ。テレビ西日本報道部、フジテレビ政治部、日本BS放送報道局長などを経てフリーに。新著「戦争を知っている最後の政治家中曽根康弘の言葉」(ブックマン社)が絶賛発売中。

カテゴリー: 政治   タグ: , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    デキる既婚者は使ってる「Cuddle(カドル)-既婚者専用マッチングアプリ」で異性の相談相手をつくるワザ

    Sponsored

    30〜40代、既婚。会社でも肩書が付き、責任のある仕事を担うようになった。周囲からは「落ち着いた」なんて言われる年頃だが、順調に見える既婚者ほど、仕事のプレッシャーや人間関係のストレスを感じながら、発散の場がないまま毎日を過ごしてはいないだ…

    カテゴリー: 特集|タグ: , |

    これから人気急上昇する旅行先は「カンボジア・シェムリアップ」コスパ抜群の現地事情

    2025年の旅行者の動向を予測した「トラベルトレンドレポート2025」を、世界の航空券やホテルなどを比較検索するスカイスキャナージャパン(東京都港区)が発表した。同社が保有する膨大な検索データと、日本人1000人を含む世界2万人を対象にした…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , |

    コレクター急増で価格高騰「セ・パ12球団プロ野球トミカ」は「つば九郎」が希少だった

    大谷翔平が「40-40」の偉業を達成してから、しばらくが経ちました。メジャーリーグで1シーズン中に40本塁打、40盗塁を達成したのは史上5人目の快挙とのこと、特に野球に詳しくない私のような人間でも、凄いことだというのはわかります。ところで、…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , |

注目キーワード

人気記事

1
長与千種がカミングアウト「恋愛禁止」を破ったクラッシュ・ギャルズ時代「夜のリング外試合」の相手
2
日本と同じ「ずんぐり体型」アルプス山脈地帯に潜む「ヨーロッパ版ツチノコ」は猛毒を吐く
3
沖縄・那覇「夜の観光産業」に「深刻異変」せんべろ居酒屋に駆逐されたホステスの嘆き
4
段ボール箱に「Ohtani」…メジャーリーグMVP発表前に「疑惑の写真」流出の「ダメだ、こりゃ!」
5
巨人が手ぐすね引いて待つ阪神FA大山悠輔が「ファン感謝デー」に登場する「強心臓」