ゴールデンウイークに突入するが、春競馬はこれからが佳境。今週のメインは、まさに伝統とも言うべき天皇賞・春だ。
スタミナを競う一戦で、超一流と称される馬は少ないが、それでも顔ぶれはなかなか。いずれもスタミナ自慢で、それゆえ難解な一戦。馬券的には実におもしろいレースだ。
周知のように天皇賞は、春、秋と2回ある。以前はともに3200メートルの距離で争われたが、秋のそれは10ハロン戦に改められている。それだけに、真に日本的な伝統ある競馬は、この春の天皇賞。スピードがより求められる現在の競馬にあっては価値が低くなったように見られるが、頑固に伝統を崩さないのも、これまた高い評価を与えるべきではないだろうか。
ただ、春の盾は一筋縄では収まらない。これは馬の力量とは別に、秘めたスタミナがモノを言うレースで、それが決定打になるからではなかろうか。
天皇賞・春に馬単が導入されたのが03年。それ以降、これまでの15年間、その馬単で万馬券になったのは8回(馬連では7回)。2回に1回が荒れるレースと言ってよく、事実この間、1番人気に応えた馬はわずか2頭(2着0回)。2番人気馬は5勝(2着2回)。過去のデータからもわかるように、人気どおり簡単には決まらないGIと言っておこう。
さて、この間、荒れた際の主役を列挙しておこう。
03年ヒシミラクル(7番人気)、04年イングランディーレ(10番人気)、05年スズカマンボ(13番人気)、09年マイネルキッツ(12番人気)、11年ヒルノダムール(7番人気)、12年ビートブラック(14番人気)が勝利しており、2着馬では05年ビッグゴールド(14番人気)、07年エリモエクスパイア(11番人気)、16年カレンミロティック(13番人気)と、まずは軽く見られていた馬が勝ち負けしていることがわかる。
絶対的な存在が見当たらない今年も、「だから」と思いたくなる。
今年の有力どころは東西の前哨戦を制したガンコ、レインボーライン、ステイヤーズS(3600メートル)を3連覇中のアルバートを筆頭として、クリンチャー、サトノクロニクル。そして実力派シュヴァルグラン、上がり馬のチェスナットコート、トーセンバジルといったところ。
しかし、いずれの馬も決定打を欠く。必ず荒れるとは言わないが、マレに見る大混戦と言っていいだろう。そうであれば、データ、常識を度外視しての穴狙いも許されるのではないか。最も期待を寄せてみたいのは紅一点、スマートレイアーである。
有力馬のほとんどが前走より2キロ以上の斤量を背負っての競馬になるが、同馬は1キロ増の56キロでの競馬。その前走・大阪杯は香港遠征後3カ月ぶりの実戦だったことを思えば、大した負担ではない。
それに大阪杯の時は、まだ良化途上であり、余裕残しの状態だった。それを思えば、9着に敗れたとはいえ、勝ち馬と1秒1の差なら巻き返しは十分可能だ。
そもそも、この春は天皇賞が目標。一度使って挑むのは予定どおりで、この中間は関係者の思惑どおり一変した好状態にある。
京都〈1 2 0 3〉と比べて阪神〈6 1 0 3〉に良績がある馬だが、京都との相性が悪いわけではない。休養明けだったり、重め残りが敗因で、京都に良績が少ないのは、たまたまと見るべきなのだ。
母系はスタミナの宝庫。近親、一族には欧米で活躍した馬が多く、大一番に強い血筋。アッと驚く一発があっても不思議はない。