鰹が旬の季節である。その昔、何をさておいても初鰹を食すのが江戸っ子と粋がったが、栄養素も立派なもの。徳川吉宗も愛好したスタミナの宝庫なのだ。
目には青葉 山ほととぎす 初鰹
とは、江戸中期の俳人・山口素堂(1642~1716)の作。あまりにも有名な句だが、何度読んでもヨダレが出てくる。しかし、ヨダレが出るのは、われわれ庶民ばかりではなかった。紀州の“暴れん坊将軍”徳川吉宗の好物でもあった。この句が生まれたのも、吉宗の時世のことだ。フードコンサルタントの中川貴子管理栄養士が言う。
「鰹は魚類の中でも高タンパク。さらにはビタミン・ミネラル類、特にビタミンB類とD類が豊富な上に、血中コレステロール値を低下させ、脳を活性化する働きを持つDHAや血液の流れをよくするEPAが多く含まれている」
そして、ダシをとるのに使われるカツオ節も栄養があり、スタミナ源にもなるというのだ。中川さんが続ける。
「鰹節は、豊富な良質のタンパク質のほか、高血圧を予防し筋肉の動きをよくするカリウム、強い歯や骨を作るリン、ビタミンDなどを含んでいる。また必須アミノ酸も豊富でコラーゲンの働きが活性化されるので老化を防ぐんです」
そして、紀州には魚のすり身と山芋のとろろをまぜた“すり流し芋”というのがあるという。
「簡単でおいしいうえに精がつく」(中川さん)
カツオをすり身にし、おろした山芋と混ぜれば完成。近海カツオ一本釣り漁獲量21年連続日本一を誇る宮崎でも今初「かつおフェア」の真っただ中。ウマいカツオの“すり流し芋”をモリモリ食べて、“暴れん坊将軍”を目指そうか。
(谷川渓)