創刊3年目に突入したビートたけしのWEBマガジン「お笑いKGB。その宣伝企画として、殿のたっての希望により制作を進めていた無料アプリ「カツラ飛ばしゲーム」が、いよいよ完成に近づいています。
で、つい先日、レギュラー番組の生放送のため、楽屋へ入った殿に、「殿、いよいよカツラ飛ばしゲームが完成いたします」とお伝えすると、「いいな! 遂にできるか」と、まずは“待ちに待った!”的な感想を漏らし、すぐさま、
「あれか。前から言ってた、『カツラ神経衰弱』も作ってんのか?」
と、気持ちはすでに、カツラゲーム第2弾に向かっていたのです。そして、
「他にもっと何かねーか?」
と、何やら思案を始めると、2分程黙りこんだあと、
「『カツラ鎌倉』ってのもあるな。大きなカツラの中で子供たちがモチを焼いたりして食ってんだ」
と、雪で作るかまくらをカツラに置き換えた、正直何だかよくわからないゲーム案まで出してきたのです。
さらには、
「『カツラ方位磁石』ってのもあるぞ。森で迷っても、常にカツラが北を指すから道に迷わないんだ」
「『カツラセンサー』ってのもいいな。人の目線がカツラに行くと、頭に電流が流れて、『まずい。今、カツラを見られている。気を抜かずちゃんとしなければ』って気持ちにさせてくれるやつ」
等々、どれも、“いったい、それがどんなゲームになるのか。皆目見当もつかないカツラゲーム案”を例によって、何かに取りつかれたように提示してきたのです。さらにさらに、「おい、ちょっとメモと書く物貸してくれ」と、わたくしに筆記用具のセットを求め、メモとボールペンを受け取ると、何やらニヤニヤしながら、3分程無言でノートにつらつらと書き殴り、「うん。これでしばらくは大丈夫だな」と、大きな独り言を漏らすと、メモを自分のズボンのポケットに入れたのでした。いったい、何が“しばらく大丈夫”なのかはよくわかりませんでしたが、きっと、カツラに関する何かしらのメモだったことは、勘の悪いわたくしでも、想像に難くありません。
しかし、いついかなる時も、カツラというワードを投げると、瞬時に“新たなカツラ遊び案”を返してくる、殿の“カツラ愛”には、毎度感服するばかりです。ハイ。で、カツラの話題で盛り上がったあと、生放送を1時間半程こなした殿は、楽屋へ戻ってくるなり、
「おい、『カツラ金魚すくい』ってのもあるな!」
と、またしてもカツラゲーム案を追加してきたのです。この時、その場にいた誰もが〈たけしさんは本番中、カツラのことを考えていたのか!〉と、心の中でツッコんだのは言うまでもございません。で、その日の仕事を全て終え、帰る殿を車の前までお送りすると、車に乗り込む直前、「北郷、カツラの件、頼むな」と、一言指示を出し、帰っていかれたのでした。殿、カツラの件、しかと承りました。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!