成田さんはもともと東映じゃないから、萬屋さんとコミュニケーションが取れてなかったんだな。それ聞いたら、今度は萬屋さんの奥さんの淡路恵子さんが、
「何、この成り上がり者!」
って怒って、萬屋さんも暴れだしちゃって。あんまり酒癖よくねーんだよ、あの人。だから俺が間に入って「オヤジさん、オヤジさん」ってなだめたら、
「ガッツが言うんだったら、わかった」
って収まってくれてさ。レフェリーだよ、俺は。主役の松方弘樹さんや東映の社長とかみんな来てるけど、萬屋さんがトップだから、誰も何にも言えないわけよ。俺は関係ねーから「まぁまぁ」って入ってさ。
そのあと、萬屋さんが「しょんべん行く」っていうから一緒についていってね。あの人、酔っ払ってて自分で出せないから俺がチャック開けて、2本の指であそこをつまんで引っ張り出して、ションベンさせたのよ。そうしたら俺の指にションベンがくっついちゃってさ。「うわっ!」と思って、萬屋さんの背広でコッソリ拭いてやったね。
萬屋さんが偉人かっつーと、俺が見たところ、あそこは偉人じゃなかったな。
プロレス界の偉人っつーか巨人っていうと、ジャイアント馬場さんだね。馬場さんとは東京駅で偶然会ったのが初対面。今から35年ぐらい前じゃないかな。階段の上のほうで手すりに寄りかかってこっち見てるから、「なんか、顔のでけぇ人がいるなぁ」と思ったら、馬場さんなの。握手したけど、馬の手みたいにでかかったねえ。あんまりでかいから動かすのがスローモーで、握手するんでも俺のほうまで手を持ってくんのに時間かかるんだよね。
プロレス見ててもそうでしょ。16文キック? あんなの、よくぶつかるなと思うけど。ロープにブン投げられたらわざわざ戻ってきて、ゆっくり足上げてるところにカーンって当たって倒れるんだからさ。ボクサーなら逃げるけどレスラーは逃げちゃダメなんだね。
巨人軍のピッチャーだった馬場さんをスカウトしたのが力道山。「2メートルの男がプロレスやったらおもしろいだろう」と思ったんだから、先見の明があったんだな。
力道山といえば空手チョップね。バシッと叩くと外人レスラーがマットにのびてたよね。ガッツ的に言わせてもらえば、空手チョップ一つで人間がのびるかっつーんだよ。「ワンツースリー」ってカウント取られても、まだのびてんだもん。
あの頃みんな、街頭テレビ見てたよね。力道山は戦後復興の一つの原動力になった日本の国民的ヒーローだな。偉人牧場入りOK!
こうして見てくると、私もいろんな偉人に出会ってきたな。実際に会った人も、歴史上の人物もいるし。
「人間は一生のうち、会うべき人には必ず会える。しかも一瞬早すぎず、一瞬遅すぎない時に」
そういう格言があるんだけど、私も今までに出会ったいろんな人のパワーをもらって生きてるんだろうね。
そんなわけで、今回の「ガッツ的OK偉人牧場」はここらあたりでOK牧場!