ところが昨年12月の定例会で配布された全員協議会資料には「権利床部分の整備費」として「10億円」と明記されていた。市民グループのメンバーが続ける。
「この10億円は何か。県に提出した事業計画書にはないんです。58億円の事業で市がプラス10億円を出すのなら46億円借りる必要はなく、36億円借りれば済む話になる。どう考えても計算が合わなくなるわけです。ではその金、どこに使うんですか。“裏金”と思われてもしかたがないんじゃないですか、ということです」
しかもこの書類を市議に手渡した全員協議会は、正式な議会ではない。さる県会議員も首をひねるばかりで‥‥。
「説明を受けるだけで、こちらから質問することができない。10億円という大金が追加される事案を質疑応答がないまま進めるなど、ありえない話。議会にかけ、市議の承認を取って初めて成立するものです」
そこで、昨年12月の定例会で配布された全員協議会資料と、昨年4月13日に埼玉県に提出され、その後認可された「事業計画において定める設計の概要の変更認可申請について」という21ページにわたる資料を入手。両者を見比べたが、確かに後者には整備費10億円についての記述はない。事業計画書にあるのは、国と市の補助金(各6億円で計12億円)、マンション等の売却(46億円)についてのみ。この変更申請は昨年5月31日に、県によって認可されている。
今年6月に行われた蓮田市議会定例会・市政に対する一般質問で、市の担当者はこの10億円の内訳について「権利変換計画に基づく整備費用と、公共施設内部の内装工事費用」と説明。さらに「都市計画法51条によれば、事業計画の中で県の認可を受けなければいけないのは設計の概要だけで、内装の有無や資産計画は含まれていない」と答弁している。
A氏の弁護人である喜田村洋一弁護士は、
「我々としては図面を変える以上、県の許可が必要ということ。市には別の考え方があるから、最終的には裁判で判断しましょう、と。しかもこの10億円は突然、天から降ってきたような話。地方行政にはこういう話がよくあるとは聞きますが、驚きますね」
さらにこの再開発事業では、ビルの1階と2階部分をスケルトン仕様とし、のちに公共施設や店舗を入れる計画だが、市民グループの一人によれば、
「病院や公共施設については、ビル完成後にこの事業とは別に蓮田市が決める、としているのに、配布された資料によれば、これも再開発事業の中に入っている。別事業なら建設業者を入札しますが、再開発事業となれば、建築業者は東急不動産の下請けとなるはず。実は、これも大問題なんです」
ちなみに17年2月、市発注の道路工事で予定価格を業者と事前に調整し落札させたとして、公契約関係競売入札妨害の疑いで、市の道路課主幹ほか、業者3名が埼玉県警に逮捕され、市役所も家宅捜索されている。
さらに、追い打ちをかけたのが、この事業のJV(ジョイント・ベンチャー)、つまり共同体として名を連ねていた蓮田病院を巡る問題だった。市は昨年6月、募集要項を公表し、建設業者を公募し、唯一、名乗りを上げたのが「東急不動産・蓮田病院事業共同体」。市は建設業者として選定する予定だった。