秋のGI戦の第一弾、スプリンターズS。桜花賞、安田記念勝ちのグランアレグリア、昨年の雪辱を期すダノンスマッシュ、前哨戦のセントウルSで健在ぶりをアピールしたミスターメロディ、この春の高松宮記念の覇者モズスーパーフレアなど、快速を誇るスターぞろいの豪華版。見応え満点の一戦で、顔ぶれがこうまで多彩だと馬券的にもおもしろそうだ。
ただ、データからは、大きな穴を狙う向きには期待薄か。02年に馬単が導入されて以降、これまでの18年間、その馬単での万馬券は4回(馬連は1回のみ)。この間、1番人気馬は8勝(2着4回)、2番人気馬は2勝(2着6回)。1、2番人気馬でのワンツー決着は3回だけだが、比較的堅く収まる傾向にある。
それと、牝馬がよく善戦している。出走頭数が牡馬に比べて少ないものの、過去18年間で5勝(2着7回)をあげている。そうであれば、やはりグランアレグリアやモズスーパーフレアなどの牝馬勢は、注目せざるをえないだろう。
馬券的には本命サイドのGIではあるが、争覇圏内とみられる有力どころは少なくなく、それらの力量に大きな開きはない。しかも電撃の6ハロン戦。わずかな出遅れも致命傷になりかねず、解答を得るのは簡単ではない。
大きくは荒れないまでもひと波乱あり──、そうニラんでみた。
穴党として最も期待を寄せてみたいのは、レッドアンシェルだ。4歳、5歳の活躍が目立つ中、年齢から下り坂にあるとみられる6歳馬。前哨戦の一つ、GIII北九州記念を制して意気は上がっているが、評価はやや低い。
ただ、二度の脚部不安もあり、また間隔を開けて大事に使われてきたので、肉体的な衰えは見られない。むしろ、ここにきて地力強化した印象さえある。
実際、庄野調教師は「ブリンカーの効果なのか前走は見違えるばかりの走りを見せてくれた。とにかく元気だし、馬体に張りが出て雰囲気が実にいい」と言って、健在ぶりに目を細めるほどだ。
1週前の追い切りも軽快かつリズミカル。庄野師をはじめ厩舎スタッフは「短期放牧でリフレッシュ。思いどおりの調整ができており、最近では一番のデキ」と口をそろえ、仕上がりのよさを強調している。
ならば6歳の秋を迎えて本格化したとみて、大きく狙ってみたい。
もともと新馬─特別を連勝。将来を嘱望された厩舎屈指の逸材と注目された期待馬である。この顔ぶれに伍しても、ポテンシャルは決して見劣りするものではない。
血統的にみても、GIを勝っていい馬だ。世界最強牝馬の名をほしいままにしているエネイブル(凱旋門賞連覇)を輩出したナサニエル(キングジョージ6世&クイーンエリザベスS、エクリプスS)など近親、一族に活躍馬がズラリといる良血だからだ。
さらに展開も向くはず。前々で勝負をしたい快速馬が多く、ハイペースは必至。ここにきて身上の強烈な末脚に磨きがかかったレッドアンシェルにとっては、願ったりの流れになるのではないか。良馬場を条件に、狙い撃ちといきたい。
穴は、アウィルアウェイだ。ここを視野に入れていたインディチャンプ(安田記念、マイルCS)の妹で、6ハロン戦での実績は十分。今回は休み明け3戦目でもあり、この中間は、大幅な良化ぶりをみせている。「一発」があっても不思議はない。