「今度よ、なんか俺がNHKのコント協会の会長になるらしいんだよ」
今から半年程前、まるで人ごとのように、殿は周囲に冒頭の言葉をよく漏らしていました。
なんでも、NHKがコントだけのスペシャル番組「コントの日」の放送に先立ち、「日本コント協会」を発足させて「その会長をぜひたけしさんに」と、オファーがあったそうです。
で、11月3日、すでに収録済みの「コントの日」がゴールデンタイムでたっぷり2時間半、かなり異例な形で放送されました。
放送日、楽屋にてリアルタイムで殿と一緒に見ていたのですが、殿は自身が参加したいくつかのコントを確認すると、やや照れながら「くっだらね~な」といった感想をまずは漏らすも、「だけどさすがにNHKだな。金かけてるな~」と、冷静な感想も付け加えたのです。確かに、明らかなセットの豪華さに加え、細かく取り決めたカメラ割りなど、誰が見ても手間と予算を惜しまない番組作りの姿勢がひしひしと伝わってくる、大変力の入った番組となっていました。
で、放送後、「殿、来年は大河ドラマで志ん生さん役もありますし、ちょっとNHKづいてますね(殿は19年の大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』に、古今亭志ん生役で出演)」と話題を振ると、それがきっかけとなり、かつて出演したNHKの番組での爆笑話をいくつか聞かせてくれたのです。そして、ひととおり盛り上がると、
「だけど来年、大河なんて出たらよ、もしかしたら、紅白に呼ばれるかもしれねーな」
と“まーあくまで冗談だけどよ”といったトーンで、少し気の早い予想を口にしたのでした。
そんな殿の発言に、わたくしが「できれば歌手として出て歌ってほしい」だの「いや、やっぱり誰かの応援枠で芸人として出てほしい」だのと、勝手な要望をお伝えすると、
「これで紅白出て、翌日に元旦からハワイなんか行っちゃったら、俺もすっかりあこがれの一流芸能人だな!」
と、いつものようにふざけだしたのです。そんな殿の発言に“今どき正月にハワイ!?昭和の芸能人か!”的ツッコミを皆が一斉に浴びせると、さらにノッてきた殿は、
「正月にハワイ行って、首からレイなんかぶら下げてよ、待ち構えてるマスコミのインタビューなんか受けちゃったら、もう怖い物なしだな!」
だの、
「金が足りなくてグアム行っちゃってよ。行ったら行ったで、マスコミなんか誰もいなくて、アロハシャツ着てこっちからマスコミ探し回ったりしてな」
だの、とめどなく、ひと昔前の芸能人の正月休みをちゃかしまくったのです。
しかし、ハワイはともかく、大河ドラマをやり終えた殿が何らかの形で、あの大晦日の番組に参加している可能性は十分にあるのでは? と、改めて想像してしまう、わたくしなのです。
ビートたけしが責任編集長を務める有料ネットマガジン「お笑いKGB」好評配信中!
◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!