「経済再生」を掲げる安倍政権で、もっぱら注目を浴びているのは「アベノミクス」なるもの。ところがその一方で、なぜかほとんどメディアでは報道されない「重大方針」を発信していたのだった。テーマは、日本の領土侵略行為を繰り返す巨大隣国の撃退。周到かつ過激なその秘策の全貌を明らかにする。
〈2007年夏、日本の総理としてインド国会で演説した私は「2つの海の交わり」について話し、集まった国会議員の拍手喝采と賛同を得た。あれから5年を経て、私の発言は正しかったということをいっそう強く確信するに至った〉
これは昨年12月27日付で、チェコに本部を置く国際言論NPO団体「プロジェクト・シンジケート」のウェブ上に掲載された「アジアの民主主義的安全保障ダイヤモンド」と題する英語の論文。「私」とは、安倍晋三総理(58)のことである。
「プロジェクト・シンジケート」は、日本を含む世界150カ国以上の新聞社、通信社と提携、配信する媒体であり、世界的投資家ジョージ・ソロス氏、米マイクロソフト会長のビル・ゲイツ氏ら世界の要人が寄稿者として名を連ねる格調高い機関。ところが、あまりに過激で挑発的な内容のせいなのか、一国の総理が世界に向けて訴えた内容を、なぜか日本のメディアはほとんど取り上げていない。
まず、冒頭の「インド国会での発言」を振り返ろう。
〈日本はこのほど貴国と「戦略的グローバル・パートナーシップ」を結び、関係を太く、強くしていくことで意思を一つにいたしました。日本とインドが結び付くことによって、「拡大アジア」は米国や豪州を巻き込み、太平洋全域にまで及ぶ広大なネットワークへと成長するでしょう〉
日印両国の結託が「2つの海」、すなわち太平洋とインド洋の交わりとなる、との主張。実は、これこそが、中国の脅威を封じ込めるための方策なのである。安倍論文を読み進もう。
〈太平洋における平和、安定、航行の自由は、インド洋における平和と安定、航行の自由と切り離すことはできない。アジアにおける最古の海洋民主主義国家たる日本は、両地域の共通財産を保護するうえで、より大きな役割を担うべきである。にもかかわらず、南シナ海はますます『北京の湖』と化しているように見える。(中略)南シナ海は、中国海軍が核弾頭ミサイルを搭載した潜水艦の基地とするに十分な深さがあり、隣国を恐れさせる新型空母もまもなく登場するだろう〉
南シナ海に強引に進出している中国は、西沙諸島ではベトナムと、南沙諸島ではフィリピンと、領海紛争を起こしている。政治部デスクが解説する。
「安倍論文にあるように、南沙諸島で中国はそろそろ空母を常駐させるつもりです。尖閣と同じように軍艦を行き来させ、航空機をスクランブル発進させるなどして制圧していくのです」
安倍論文はそんな中国を牽制し、「北京の湖」という皮肉タップリの表現を用いて批判しているのだ。