正月の一大スポーツイベント「箱根駅伝」。平成最後の第95回記念大会は、例年よりも2チーム多い23本の襷が箱根路を1月2日(往路)、3日(復路)に駆け抜ける。史上3校目の5連覇に挑む青山学院大の名将が「史上最強チーム」と胸を張るまでの舞台裏を追うとともに、政界との「深い関係」の先にある「野望」に迫る。
毎年、劇的なドラマが生まれる東京箱根間往復大学駅伝競走。前大会は青山学院大の原晋監督(51)が「戦国時代」と称したものの、あっさりと総合優勝を果たし、史上6校目の4連覇を達成した。スポーツライターの折山淑美氏が、今大会の展望を解説する。
「マスコミの多くが『青学、5連覇に死角なし』と報じているように、圧倒的な総合力を誇っています。前大会のように往路で後れを取っても、復路できっちりと逆転してしまうだけの強さを秘めている。今の青学はメンバーの層が厚いため個々にプレッシャーがかからず気持ちを楽にして走れ、ブレーキがいない。疲労骨折などよほどのアクシデントがないかぎり、5連覇は濃厚でしょうね」
前回大会では、4区と9区で区間9位とブレーキになったようにも見えるが、いずれも区間トップの記録から1分台の遅れにとどまり、逆に区間賞が4人、区間2位が2人と、補って余りある総合力を見せつけた。スポーツ紙デスクによれば、
「今季の学生駅伝の出雲全日本大学選抜駅伝(出雲路)ではベストメンバーを組まず、続く全日本大学駅伝対校選手権(伊勢路)でも圧倒的な優勝劇を演じた。胴上げされた原監督は『出雲(6区間)に(青学から)3チーム出場すれば1位、3位、5位。全日本(8区間)なら2チームで1位と5位』と強気な原節が飛び出すほどの選手層を誇ります」
16年の学生駅伝3冠に続き、史上初となる2度目の3冠制覇に王手をかける中、伊勢路の優勝祝勝会では三木義一学長から、
「原監督には来年から地球社会共生学部の教授になってもらいます」
とサプライズ発表があった。全国紙社会部記者はこう話す。
「遅すぎるぐらいの就任でしょう。青学にスポーツ系の学部があれば、また違ったのでしょうけど。原監督は16年に箱根駅伝を連覇し、学生駅伝3冠に輝いたあたりから、以前から思い描いていた駅伝などの陸上長距離界の改革案を周囲に語り始めています。ところが青学の職員であり、一監督の声は、陸連(日本陸上競技連盟)内部にはなかなか届かなかった」
常に「常識を疑え」をモットーにしてきた原監督は、16年の箱根駅伝後のリオデジャネイロ五輪の代表選考会を兼ねた東京マラソンで、教え子の下田裕太と一色恭志が日本人2位、3位と快走すると、
「代表の大本命に挙げるべき。下田の伸びしろは120%、200%ある。東京五輪から逆算して走らせないと」
恵まれた素質と将来性を買うべきという持論を強くアピールしたのだ。
「しかし陸連は五輪の選考で伸びしろを考慮する考えがないことを明言したのです。原監督は発言力を高めるためにも、以前から親交のあった元通産官僚で、早大大学院スポーツ科学研究科(1年制コース)の平田竹男教授のゼミに17年4月に入学し、修士論文は最優秀賞を受賞した」(スポーツ紙デスク)
これが青学教授就任の足がかりとなり、プロフェッサー(教授)監督の仲間入りを果たすことになる。