北アフリカの地で日本人10人を含む、8カ国37人もの命が奪われた。1月16日未明、「日揮」の居住区がイスラム武装勢力に襲われた刹那、銃声とともに絶命させられた者がいれば、震えながら同僚が処刑される瞬間を茫然と見送ることしかできなかった者もいたのである。
ダダダダッ‥‥!
銃撃音が響いた。
響いてはやむ。
そして、収まったかと思えば、時間を置いてまた轟音が聞こえてくる。
安息の時間を与えない、生き地獄はいつ終わるとも知れなかった。
その合間に聞こえてくるのは機械的に発せられたこんなセリフだったという。
「国籍はどこだ!?」
いずれも、なまりの強い英語やフランス語だったというが、テロリストたちにとっては国籍を確認することが重要だったようだ──。
現地時間1月16日未明(日本時間で昼頃)、アルジェリア南東部イナメナスにある、プラント建設大手「日揮」の居住区には、遅番、あるいは休みの作業員などがいたという。
国籍は秘すが、アルジェリアでの勤務経験もある日揮作業員のA氏が証言する。
「テロ集団は居住区の中でも、最初から外国人が多く生活している棟に狙いをつけて襲撃してきたんだ。そして国籍を尋ね、アルジェリア人であれば居住区の外に出して1カ所に集められ、身の安全を保証されたとか。場合によっては、流れ弾に当たるケースを心配されて、部屋から出ないよう指示されたアルジェリア人もいたって話だ」
イスラム武装勢力が首尾よく目的の棟を目指したのは、報道があったように内通者がいたためだろう。
ただし、作業員の多くはあくまで現地のアルジェリア人だったようで、外国人の多い居住棟に侵入しては国籍を確認する作業はひっきりなしに続いた。
そして、欧米人や日本人の作業員が見つかると、先のアルジェリア人への対応とはまったく違う仕打ちが待ち受けていたという。
「拘束されて人質となるわけだけど、拘束もされずに、その場でダダダッて処刑されたケースもあったって‥‥。見るからに外国人とわかる白人なんかがいきなりやられたみたいだ」
こう悲痛な声を上げるA氏の仲間もこの居住棟にいたそうだが、襲撃が発生した際、ただならぬ気配を察知することができたため、身を潜めていて九死に一生を得たというのだ。
「助かりはしたけど、そんな生死を賭けたやり取りをただじっとしながら、ずっと聞いていたと言うんだ。部屋の中まで探すべく、ドアノブを破壊する銃撃音だったり、同僚がむごたらしく処刑される地獄の轟音をね‥‥」(A氏)