森光子、大島渚、大鵬‥‥。最近、有名人が次々と逝去している。そこで知りたいのは遺言の書き方。中には、葬儀のやり方、納骨のしかたまで逐一書き残して昨秋他界した、流通ジャーナリストの金子哲雄氏のようなケースもある。この「遺言の書き方」基礎講座を参考にあなたも最期の時に備えてはどうか。
近年、「断捨離」という考え方が注目されている。
「断」とは入ってくるいらないものを「断」つ、「捨」はいらないものを「捨」てる、「離」は物への執着から「離」れるということだ。
この考えは身辺整理を進め、老後を身軽に快適に暮らそうという「老前整理」につながるという。その中には当然「遺言を書く」ことも含まれるだろう。
まずは「老前整理」(小社刊)の著者で「(株)くらしかる」代表の坂岡洋子氏が言う。
「老後の暮らしをシミュレーションするには、高齢者になってからではダメで、気力・体力・判断力がある老いる前でなければなりません。身辺をすっきりさせることによって、楽に老いていけるのです」
東日本大震災以降、自由な形式の遺言とも言える「エンディングノート」を書き記す人が増えている。もしもの時に備え、預金の使い方はじめ終末医療、葬儀のしかたなどを書き留めておくと、あとに残された人が悩まなくても済むし、何より自分の老後が具体的になってくるという。
NPO法人「トータルライフサポート」の三国浩晃理事長が言う。
「自分がこれからどう生き、どんな死に方をするか。まず、それをエンディングノートに書けば老後のビジョンが具体的に見えてきます。最近、男女ともに『おひとりさま』が増えていますが、1人で生きていく以上、なおさらこれからのことをはっきりさせたほうがいい。そうすることによって精神的にも安心感、充実感が得られます」
では、具体的に何から始めるか。前出の坂岡氏は、エンディングノートを書く前に現在の身辺をしっかり整理すべきだと言う。
「高齢者は決められた額のお金と蓄えを取り崩して生活しているため、お金は確実に減っていきます。だからこそ『物だけでも減らさずに維持したい』という気持ちが、物への執着につながり、物をためこんでしまう。ハードルの低いものから処分をスタートするのが鉄則です。安いものやほとんど使ったことがないものから始め、“思い入れはあるが不要なもの”や“高価だが不要なもの”に進んでいくといいですね」
処分に迷った時は無理に判断せず、ひとまず「保留箱」に入れておく。そして、半年たっても思い出さなかったら、絶対必要のないものだというのだ。
「例えば、仕事関係でつきあいのあった人とよくゴルフに出かけ、ゴルフセットを持っていたとします。しかし、退職後、仕事上のつきあいもなくなり、会うこともない。そういう場合は思い切ってつきあいの整理とともにゴルフセットも捨ててしまっていいのかもしれません」(坂岡氏)