大相撲初場所、千秋楽で遠藤を破り13勝2敗で初優勝を飾った、モンゴル出身の関脇・玉鷲(片男波部屋)だが、ここまで至るまでには、モンゴル人力士同士における人間関係の苦悩もあったようだ。
横綱・稀勢の里の復活という話題で始まった初場所だったが、3連敗でさっさと引退。ほか横綱・大関陣も不調だったというのが大方の印象だ。
「白鵬以外の横綱・大関陣は、序盤で負けが目立った。その白鵬も勝つには勝ったがヒヤヒヤの連続で、10連勝はしたものの、その後はまさかの3連敗。あっさり優勝戦線から消えました」(相撲記者)
そうした中で優勝をもぎ取った玉鷲は、白鵬、鶴竜とは同世代(両横綱は33歳)の34歳で、出世争いでは遅れを取っていた。というのも、もともとスポーツ経験がないまま相撲に興味を持ち、日本に留学していた姉を頼って来日、そのまま入門するという独自の路線を歩んできたためだ。
「玉鷲は、貴ノ岩が元日馬富士に殴打されたモンゴル出身どうしの飲み会にも呼ばれていたそうですが、ドラマを見ることを理由に回避していた。当時、玉鷲はまださほど脅威ではなかったこともありますが、モンゴル人力士の集団と一定の距離を置いていたことも幸いしたと言えます。もし出席していれば、事件に巻き込まれていたかもしれませんからね」(全国紙スポーツ担当記者)
暴行事件により相撲協会が設置した問題再発防止検討委員会の報告書では、はっきりと“モンゴル互助会”なる組織があることに言及している。
「貴乃花氏が以前、『白鵬が玉鷲を脱臼させたことがあり、それも稽古ではなく飲み会の席だった』と、タニマチに明かしていたことも報じられている。モンゴル人力士間で絶大なる力を持つ“モンゴル互助会”ですが、そうした環境に多少なりとも悩まされながら、ようやく自身にスポットを向けさせた。本当であれば、もっと早く優勝していたかもしれません」(前出・相撲記者)
表彰式で涙が止まらなかったのは、優勝の喜びだけではなかったのかもしれない。