社会

秋津壽男“どっち?”の健康学「がんはどんな人がなりやすいのか?手術の際も体型が経過に影響する」

 人間は体質や遺伝によって、なりやすい病気となりにくい病気があります。50代から患者数が急激に増える「がん」も、遺伝や生活習慣が大きく左右します。ではここで質問です。太っている人と痩せている人とでは、どちらががんになりやすいでしょうか。

 国立がん研究センターの研究報告によると、がんのリスクを高める原因として喫煙・飲酒・肥満を挙げています。

「肥満に伴いインスリンが十分に働かなくなり、インスリンが過剰に分泌される高インスリン血症が起きたり、細胞の増殖・分化を促進するインスリン様増殖要因が持続的に増加したりすることで、結腸がんなどのリスクを上げると考えられる」

 と記載されています。

 他に「運動はがんのリスクを確実に下げる」と書かれてもいます。その理由としては「肥満の解消、血糖を下げるホルモンであるインスリンの働きの改善、免疫機能の増強、脂質の吸収などを調節する胆汁酸の代謝への影響がある」とあり、運動=肥満の解消ががんのリスクを下げる結果となるのです。

 解答としては、痩せている人より太っている人のほうが、がんになるリスクは高いと言えます。

 肥満は他にもさまざまな病気につながります。脂肪が多いとがんになりやすいうえ、がんの発見も遅れます。痩せていればわかる、しこりなど体の変調も、太っているとわかりにくくなるため、肥満は大敵です

 また、肥満のがん患者を手術する場合も、手術がしにくいという欠点が生じます。痩せていればおなかを3センチほど切るだけで済むものが、脂肪を何センチも切らねばならず、手術方法や手術時間にも差異が生じます。メスをどれだけ入れるかで手術の内容や時間も変わってきますし、術後の治り方も違ってきます

 さらに、麻酔は脂に溶けるため、手術が終わっても麻酔が切れにくく、麻酔事故の可能性も生じます。

 イギリスの研究によると、2012年に発症したがん患者の6%は糖尿病を患っており、糖尿病患者のがん発症リスクは1.2倍にも及びます。体重(kg)÷[身長(m)×身長(m)]で測定するBMIでみると、30以上の肥満患者が多かったそうです。

 がんになる一番の要因は喫煙だと言われていますが、肥満もタバコと同じぐらいハイリスクだというのが近年の研究からわかっています

 ただし、痩せているからといって、がんの可能性がゼロになるわけではありません。先ほどの研究によれば、BMIで21未満と30以上の2つのグループは、ともにがんを患う可能性が高いという研究結果が報告されています。

 つまり「非常に痩せている人」も、がんの可能性が小さくないのです。

 性格的な傾向として、太っている人は楽観的、痩せている人は考え込むことが多いと定義しています。がんをやっつける自然免疫=ナチュラルキラー細胞は、クヨクヨする人、考え込む人のほうが弱まりやすくなります。そう考えると、痩せていて、楽観的な人はがんの可能性も低いと言えます。ただし、生活習慣は大病の可能性を高めますので、楽観的といえども喫煙&酒飲みという人は脳卒中や心筋梗塞のリスクが高くなります

 以上をまとめると、喫煙をせず、酒は少量で、日常的に運動を行い、1日の摂取カロリーが適度で、クヨクヨしない性格の痩せている人が「がんになりにくい理想的なタイプ」かもしれません。

■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。

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