侍ジャパンが「悪化する日韓関係」のトバッチリを食らいそうだ。
稲葉篤紀・代表監督が今年11月のプレミア12、東京五輪を優位に戦うため、「韓国、台湾両国のプロ野球を視察する」と語り、8月15日から台湾を視察。9月には韓国を訪問する予定だが、「視察」を口にした時点で、宿敵・韓国の術中にはまっていたようだ。
「韓国は孫銅烈代表監督を下ろし、北京五輪で金メダルを獲得した金卿文元監督を代表指揮官に復活させました。当時のイヤな記憶がよみがえった関係者も少なくありません」(球界関係者)
当時のイヤな記憶とは、金卿文監督が星野仙一代表監督を苦しめたことだ。星野監督は韓国戦で左腕・岩瀬仁紀を救援に送り、逃げきり態勢に入ったが、金監督は左バッターを代打に送った。当然、「何かある」と思った侍ジャパンのバッテリーと星野監督は警戒を強め、そのまま自滅してしまったのだ。
韓国球界に詳しい関係者によれば、61歳でプレミア12、東京五輪を戦うことになるベテラン指揮官の現場復帰は想定外だったという。
「金監督は“感覚を大事にする指揮官”と言われています。何を仕掛けてくるかわからないし、過去のデータや選手の実績もアテにしません。韓国も日本同様、プロチーム監督とは別に代表監督を置いているので、結局、ベテラン金監督の采配は視察できません」(前出・関係者)
韓国、台湾の視察は稲葉監督の要望によるものだが、“直感で打順編成”までやってしまうベテラン指揮官の前では何の意味も持たないというわけだ。
「カーリングでは韓国の女子チームが札幌開催の大会直前になって不参加を通達してきました。他の日本が舞台となった一部スポーツ大会で、同様の声が聞かれます。11月のプレミア12の舞台は東京ドームです。野球まで韓国が出場辞退してくるとは考えられませんが…」(前出・関係者)
韓国側は「日本政府による輸出規制のカタキを野球で」と思っているともいわれ、稲葉監督にしてみれば、とんだトバッチリだ。
「侍ジャパンには常設コーチが5人いますが、プレミア12でベンチ入りできるのは、4人まで。誰を外すことになるのか、稲葉監督も決めかねています。外されたコーチをスコアラー登録する裏技も提案されましたが、主催の世界野球ソフト連盟が認めるかどうかわかりません。最終決定ではありませんが、東京五輪も4人制になりそうです」(ベテラン記者)
一塁コーチを選手に任せる方法もあるが、良策とは言えない。感性で奇策を仕掛けてくる宿敵に対し、相談役のコーチが減るのはよろしくない。9月の視察は稲葉監督の不安を解消するものにはならないようだ。
(スポーツライター・飯山満)