宮藤官九郎氏の脚本による大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」(NHK)が視聴率ひとケタの低迷に陥っている。もともと近代を描いた大河ドラマは視聴率的に弱いと言われており、さらに主人公の知名度も視聴率に影響を及ぼしているという。
明治以降に物語が始まる大河ドラマには、1936年から戦後の軍事裁判までを背景にアメリカ移民の日系二世を主人公とした「山河燃ゆ」(84年・平均視聴率21.1%)、明治から大正を背景に女優・川上貞奴と夫の音二郎の半生を描く「春の波涛」(85年・18.2%)があった。大河ドラマで平均視聴率20%割れが増えたのは2000年以降で、それ以前は25~30%で推移していたことを考えると、数字は今一つだったということになる。
また、主人公の知名度が低いものには、応仁の乱を起こした足利義政の妻・日野富子を描いた「花の乱」(94年・14.1%)、戊辰戦争を闘い、後に同志社大学創設者の新島襄の妻となった八重が主人公の「八重の桜」(13年、14.6%)、吉田松陰の妹・文の半生を描く「花燃ゆ」(15年・12.0%)があり、人気女優の綾瀬はるかや井上真央を起用しても視聴率は振るわなかった。
そうした視点で見ると「いだてん」は日本初のオリンピック選手・金栗四三が現在の主人公で、やはり“近代もの+無名の主人公”というネガティブ要素を背負う。視聴率低迷は想定内の結果ではないだろうか。
しかし、その一方で、“近代もの+無名の主人公”の成功例もある。橋田壽賀子氏のオリジナル脚本で、45年から現代を生きる女医を描いた「いのち」(86年・29.3%)だ。
「橋田は『おんな太閤記』(81年)、連続テレビ小説『おしん』(83~84年)と国民的ヒットを生み出し、『いのち』の成功につながりました。初回から26.6%の高視聴率だった『いのち』と同列には語れませんが、13年の連続テレビ小説『あまちゃん』を経て今回の脚本に起用された宮藤氏の流れもそれに近いでしょう。『いのち』が主人公の医学学校卒業や結婚という節目で視聴率を稼いだことから、無名の人物を描く場合は人生の分岐点を山場としてどうドラマを作り込めるかがポイントです。『いだてん』は前半と後半で主人公が代わるため、そのポイントをもっと速いテンポで見せる必要があるのかもしれません」(テレビ誌ライター)
作品評価は、今後の動向を見てからでも遅くはないのかもしれない。