テレビ東京開局55周年特別企画として、2日間にわたり放送されたスペシャルドラマ「二つの祖国」。その中で、カツラと眼鏡とメイキャップを駆使して“本物そっくり”な東條英機を演じた殿は、
「今回のもけっこう似てんだよ」
と、その出来栄えにしっかりと満足していました。殿が「今回も」と言ったのは、08年にTBS系列で放送されたドラマ「あの戦争は何だったのか」でも、殿はやはりメイキャップを駆使して、そっくりな東條英機を演じていたからです。
で、そんな、迫真の東條英機が見られる「二つの祖国」の放送が3月23日、土曜日の21時からあったのですが、殿はその時間、レギュラー番組である22時からの生放送に備え、某局の楽屋にて待機していました。放送前の打ち合わせを終え、あとは“着替えるだけ”となった21時を少し過ぎた頃、殿のマネージャーが「今、『二つの祖国』の放送がやってまして、ちょうどうちの石塚が出演するシーンがありますので、よかったら見ませんか」と水を向けたため、楽屋のテレビを同ドラマに合わせ、殿、わたくし、スタッフ、マネージャー、そして石塚君と、じっくりテレビを見だしたのです。
ちなみに「うちの石塚」とは? 現在、殿の運転手を務める“役者志望”の弟子であり、「二つの祖国」では、思いっきり“殿のバーター”といった形で出演を果たした男です。
で、みんなでテレビを見ていると、いきなり石塚君の出演シーンが始まり、楽屋はやんややんやの大歓声となり、殿も、
「よ、待ってました!」
と、テレビの画面に声援を送ったのでした。が、石塚君が画面に登場し、皆で歓声を上げたのもつかの間、登場してものの3秒で、主役の役者さんが石塚君の前に立ち、重なる形となってしまい、まったく見えなくなってしまったのです。その瞬間、楽屋はドッと爆笑に包まれ、殿も、
「何だよ! やっと出てきたと思ったら、思いっきり○○(主役の役者さん)にかぶって見えねーじゃねぇか。お前もツイてねーな」
と、まずは笑いながら嘆くと、
「お前、あれだよ。○○の横から顔出したり、カメラ目線でピースしたりよ、もっとふざければよかったのに」
と、勝手な感想を漏らしたのです。そんな殿の発言を聞いたわたくしが「そういえば殿は昔、映画『二百三高地』にツービートで出演した時、カメラに向かってふざけて、監督に怒られたんですよね」と、三十数年前の話を持ち出すと、
「そうだよ。ツービートで呼ばれてよ、大勢で『わーっ』て突撃するシーンで、カメラが俺の後ろに付いてきたから、後ろ向きのままケツのところで『コマネチ! コマネチ!』ってやったら『何やってんだ、あいつは!』って監督に怒鳴られたんだから」
と、ヤンチャな漫才師時代を、軽く振り返ったのでした。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!