つい先日、殿のレギュラー番組である土曜夜の生放送前の楽屋は、いつにも増して笑い声が絶えない空間でした。
弟子のわたくしがこんな感想を入れるのもどうかと思いますが、この日の殿は明らかに“キレッキレ”でした。
放送前、いつもどおりに繰り広げられる、殿とわたくし、そして番組スタッフさんとの雑談の中で、この日出たワードは「芸人の闇営業」「芸能人のいけない薬物問題」そして、あまり口に出して語ることのない「芸能事務所のマージン(タレントのギャラからいくら取るか)」についてなどなど。かなり危ないテーマだったせいか、完全にリミッターを解除した殿は、どのテーマにも、ここで活字にすることなどとても難しい、超ド級の毒舌持論とボケを炸裂させ、周囲を笑かせていました。そして、さんざんっぱら毒ガスを噴射したかと思えば、冷静な口調で、
「だけど俺たち(芸人はという意味で言ってるようでした)は死ぬまでこんなひで~こと言って喜んでんだな。こんなもん外の誰かに聞かれてみろ。死刑だよ。だけど、いくつになっても、こんなことしゃべって笑ってんだから、もう生き物としてどうしようもないな」
と、自身にツッコむように総括したのです。
そういえば殿は以前、
「もうよ、選挙権とかいらねーから、俺たちにはある程度好き勝手やらせてくれねーかな」
と、愚痴のように言っていたこともありました。
で、その後、滞りなく生放送を終えた殿は、着替えを済ませると場所を移動して恒例の来週の打ち合わせに入ったのですが、最初の20分程で来週のネタを決めると、“ここから先は雑談タイム”といった空気に変わり、ここでもキレッキレで、やはり活字にするのははばかられる毒ガスを炸裂させていました。
ちなみに、この時の主な話題は「マスコミとタレント」です。
そして二転三転した話題が、なぜか再び「芸人の闇営業」に戻ると、一人のスタッフさんが「やっぱり某芸能事務所はマージンが高いから、芸人さんは闇営業をやらざるを得ないのでしょうか?」といった疑問を提示し、さらに「芸人さんもみんなで協力して、マージンを下げてもらえるよう、事務所と戦えばいいのに」と意見を述べると、殿はすかさず、
「それは無理だよ。芸人なんて、みんなと協力できないからやってるんだから。だいたいが自分のことしか考えないのが芸人で、人のことなんてどうでもよくて、自分だけいい思いしたいヤツの集まりだから。もし協力しても、絶対抜け駆けして、裏切るやつが出てくるのが芸人だから。はなからみんなと協力なんてできないから芸人やってんだから」
と、“芸人は特殊で、ある意味、人でなしな生き物である”と、殿が常々口にする持論を、改めて言い放ったのでした。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!