オールスターゲームでの「ファン投票」による中日ドラゴンズの選手選出は、ゼロ。この不人気が、松坂大輔の去就にも影響してきそうだ。
松坂大輔は二軍での実戦登板ができるまでに右肩が回復したが、一軍レベルには達していない。昨年の球宴では、松坂が巨人・菅野を抜いてトップ投票された。その松坂人気に牽引されるように中継ぎ部門で鈴木博志、三塁手部門で福田永将、遊撃手部門で京田陽平も「あと一歩」のところまで得票数を伸ばしたが、今年はダウン。監督推薦と選手間投票で、柳裕也、高橋周平、京田の3人がようやく滑り込む始末だった。
「中日の経営、営業もショックを受けています。去年、松坂ブランドに牽引されたのは事実ですが、経験を積んできた若手の認知度がいまだ上らないのは問題です」(地元記者)
そこで、「松坂はやっぱり必要」と判断するのは早計だ。突出した人気選手と他選手の共存共栄がいかに難しいかを、中日経営陣は考えさせられた。
「昨年のドラフト会議以降、オフの野球報道の主役だった根尾昂が二軍で埋もれつつあります。ケガをして出遅れたせいもありますが、4位指名の石橋康太が先に一軍昇格の可能性を見せています」(前出・地元記者)
与田剛監督は加藤、松井雅、大野奨の3捕手を使い分けてきた。石橋を6月下旬から一軍での練習を帯同させ、松井雅を交換トレードで放出している。球宴明けの一軍正式デビューとなりそうだが、こちらもイマイチ盛り上がっていない。キャッチャーの高卒新人の一軍デビューともなれば、もっと盛り上がっても良いのだが…。
「松坂、根尾のネームバリューの大きさに関する考え方が変わりつつあります。根尾に対してはこの先、チームを牽引する存在になってほしいとの期待は変わりません。一方で、松坂のような有名選手を獲ると、確かに球団が報道される時間自体は長くなりますが、他選手への扱いは小さくなっていきます。今回の球宴ファン投票で、球団はそう言うことを考え始めました」(球界関係者)
これまでは、人気選手を獲得する観客増などの恩恵も見られたが、他選手への注目度を落とすマイナス面も検討されるようになった。松坂は実戦復帰こそしたが、その後の登板については”自己申告”となっているため、首脳陣は復活の時期をつかめていない。
石橋を始め、京田、鈴木博志、高橋らの若手への正当なファン評価を確立するためにも、いわばトバッチリのような形での松坂への肩たたきは十分にあり得る状況だ。
応援歌の「お前」の歌詞は良くないと与田監督がケチをつけ、物議を呼んでいるが、こちらはもっと深刻だ。
(スポーツライター・飯山満)